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ガーネット弐番館
第11章 令和婚
小さく沢山頷く睦美に、羚汰がにっこり笑ってカフェラテを入れてくれる。

手際よく入れるのがとってもサマになっている。

しかし、本格的なエスプレッソマシーンが、スタッフ控え室にあるなんてめちゃめちゃ羨ましい。

いい匂いが部屋に広がって、少し睦美も落ち着いてきた。

「ごめんね。緊張するよね」

「あ、...ええ。まあ」

マグカップを受け取ると、そこにはラテアートでハートが2つ浮かんでいた。

「美味しい」

「よかった。落ち着いたら、今日の打ち合わせさせてもらっていい?」

「あ、はい。大丈夫です」

今日は一日、お店のモデルとしての写真撮影があったり、地方の新聞社の取材を受けることになっている。

撮影といっても、プロのようなものでなく。
よくある『体験談』的な使われ方をすると聞いている。

「ごめんね。あれから、またテレビとこっちの地元のタウン誌の取材が1件ずつ追加になったんだけど...。大丈夫だよね」

「えっ。テレビ??」

「そう。“令和”のニュースとして使いたいらしくて。ウチの宣伝にもなるし」

そう言われちゃうと断れないよ~。

「あ、ハイ...」

もうここまで来たら仕方ない。


細かく予定を聞いて、最後の確認が終了する。

「あとはー。あ、紹介まだだったね」

テーブルの横でなにやら準備していた人を呼び寄せる。

「こちらは、ヘアメイクのSACHIさん。カメラマンのYUKIさんに、えっと戸田くん。だっけ」

「SACHIでーす。よろしく~」
「よろしくお願いしますYUKIです」
「...」

「あ、はい。中野、じゃなかった田辺睦美です。こちらこそ、よろしくお願いします」

自分の名前を『田辺睦美』と言うのが、当然ながらまだ慣れない。
なんだか恥ずかしい。

「あとはまあ、その時その時紹介するね。じゃ、皆さんよろしくね」

にこやかに斎藤が去ってしまった。

この年になっても、密かに人見知りな睦美は心もとない。


「早速撮影いいですか?」

と、睦美が返事をする前にシャッターを切り始めたのはおそらくカメラマンYUKIさん。
ベリーショートが似合う、キリリとした女性だ。

手を引いて、鏡の前に連れて行ってくれるのが柔らかい笑顔が印象的なSACHIさん。

「はーい。じゃ、髪の毛から始めますね~」
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