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ガーネット弐番館
第2章 ガーネット弐番館
「婚約中」
しかも、婚約相手は、“今は”転勤で遠くに居て。
でも近々こっちに帰ってくる予定で。
結婚式の準備も始まっているし。
という、嘘。
不動産屋の今井さんはじめ、大家さんはその作り話に大喜びで、睦美の入居を許可してくれた。
“彼”は仕事が忙しくこちらにあまり帰って来れないから、書類を用意したり等の手続きは一切出来ないのでー。
と、契約の書類なんかは睦美の名前で通った。
そうやって、睦美は半年ほど前に
『ガーネット弐番館』で一人暮らしを始めた。
「婚約者さんのお名前とかお勤め先とか教えてね」
と、言われていたものの。
何だかんだと理由をつけて、今まで逃げてきた。
それが今日。
偶然が重なって、たまたま航平と一緒に居た時に、よりによって不動産屋さんの今井さんに会ってしまった。
今井さんがその「航平」イコール「噂の婚約者」と思ってしまった。
思いっきりカンチガイではあるのだけど。
あそこで「この人は婚約者ではないんです」と言うワケにもいかなかった。
だからあの時、航平に否定されなくて本当に助かった。
これで、睦美の作り話にも信憑性が出来た。
こっからまた数か月は、何とかゴマかせる。
そっから先は、『婚約破棄』というヒトシバイを打つぐらいしかもうテは残ってないけど。
睦美は、家に送ってもらう車の中で『説明』をなんとか終えた。
ハザードのチカチカという音が車内に響いている。
話が終わる数分前に、『ガーネット弐番館』には到着していたのだ。
航平は終始無表情のままずっと黙って聞いていた。
その沈黙がとてつもなく怖い。
やっぱり、怒ってるのか。
あまりに突飛で陳腐なハナシだからか、飽きれているのか。
単に運転に集中したかったのか。
彼の横顔から、いつにも増して感情が読み取れない。
何なんだ。
何か言ってほしい。
沈黙の中のハザード音が響き冴える。
その間に耐えきれず、また睦美から謝る。
「ほんっとゴメン。私も、まさかこんなことになるなんて」
「とりあえずさ」
航平が大きなため息をつくように、はじめて切り出した。
緊張が車内に走る。
「あ、はい」
「話、長い」
しかも、婚約相手は、“今は”転勤で遠くに居て。
でも近々こっちに帰ってくる予定で。
結婚式の準備も始まっているし。
という、嘘。
不動産屋の今井さんはじめ、大家さんはその作り話に大喜びで、睦美の入居を許可してくれた。
“彼”は仕事が忙しくこちらにあまり帰って来れないから、書類を用意したり等の手続きは一切出来ないのでー。
と、契約の書類なんかは睦美の名前で通った。
そうやって、睦美は半年ほど前に
『ガーネット弐番館』で一人暮らしを始めた。
「婚約者さんのお名前とかお勤め先とか教えてね」
と、言われていたものの。
何だかんだと理由をつけて、今まで逃げてきた。
それが今日。
偶然が重なって、たまたま航平と一緒に居た時に、よりによって不動産屋さんの今井さんに会ってしまった。
今井さんがその「航平」イコール「噂の婚約者」と思ってしまった。
思いっきりカンチガイではあるのだけど。
あそこで「この人は婚約者ではないんです」と言うワケにもいかなかった。
だからあの時、航平に否定されなくて本当に助かった。
これで、睦美の作り話にも信憑性が出来た。
こっからまた数か月は、何とかゴマかせる。
そっから先は、『婚約破棄』というヒトシバイを打つぐらいしかもうテは残ってないけど。
睦美は、家に送ってもらう車の中で『説明』をなんとか終えた。
ハザードのチカチカという音が車内に響いている。
話が終わる数分前に、『ガーネット弐番館』には到着していたのだ。
航平は終始無表情のままずっと黙って聞いていた。
その沈黙がとてつもなく怖い。
やっぱり、怒ってるのか。
あまりに突飛で陳腐なハナシだからか、飽きれているのか。
単に運転に集中したかったのか。
彼の横顔から、いつにも増して感情が読み取れない。
何なんだ。
何か言ってほしい。
沈黙の中のハザード音が響き冴える。
その間に耐えきれず、また睦美から謝る。
「ほんっとゴメン。私も、まさかこんなことになるなんて」
「とりあえずさ」
航平が大きなため息をつくように、はじめて切り出した。
緊張が車内に走る。
「あ、はい」
「話、長い」