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ガーネット弐番館
第1章 再会
「ここでいい?」

とあるお店の前で、そう声がかかって。
文乃との会話に気を取られていて、周りをよく見てない。
何のお店?と、キョロキョロしてしまう。
まださほど混んではないが、少し高級そうな和食のお店だ。

「え、あ...」

「じゃーね〜!!」

そんな空気を察したのか、文乃が早々に電話を切った。

「ちょ、文乃!」

「はい。座って」

あたふたしているその間に、いつの間にか和食レストランの椅子に座らされた。

なんだか釈然としないが、仕方ない。

1つため息をつくと、肩に掛けていたカバンを下ろし、スプリングコートを脱ぐ。

航平は、しれっとメニューを眺めている。

こちらから話しかけるのも、と、睦美もメニューを見る。

懐石とまではいかないが、リッチな和定食が、1人ずつ大きめのお膳に乗っている。

レストラン街のお店をほぼ食べてきた睦美もまだ食べたことないお店で、少しテンションがあがる。

定番の松、竹、梅のお膳や。春限定のお膳。お肉のお膳もあるし。ヘルシー膳なんてのもある。
どれも色とりどりの小鉢が沢山付いてきて、目にも鮮やかだ。

「決まった?」

確認もそこそこに、すらりとした手を上げて航平が店員を呼ぶ。

ちょっと、まだ決まってないのに。

焦る睦美をよそに、店員さんが近づいてきた。

「俺、これ」

航平が指したのは、一番お高い“松”のお膳だ。

「え、...えーっと」

確かに、一番豪華で魅力的なお膳だけど。
その分、お値段もビックリするお値段で。

ごく最近、やっと正社員になった睦美には、少しというか、随分お高い。
数か月前に一人暮らしも始めたばかりで、節約中なのだ。

「...じゃ、これ2つで」

迷う睦美に、航平がメニューを決めてしまう。

「え!待って...」

「あ、あとコレも」

何やらメニューを指さして注文しているのは、おそらく日本酒。

航平も睦美も飲むほうなのだ。
それは数回ではあるが一緒に食事した中で周知の事実だ。

そりゃ飲みたいけど、そういう状況?

「え、待って待って...」

お金が。お金が。

と思っても、店員さんの手前もあって、いい大人が「安いのにします」とは言いにくい。

「オゴるから。呼びつけたし」

...それもそうか。
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