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ガーネット弐番館
第1章 再会
金銭的な理由で、出来れば一人暮らしをしたくはなかった睦美だが。

半年ほど前に、“授かり婚”の妹のつわりが激しく実家に戻ってきた。しかも、婿も連れて。
以来、それまで以上に居心地が悪くなった睦美は、ちょうど同じ頃、派遣から正職員になったのを期に、家を出たのだ。

初めは戸惑った一人暮らしだったが、ようやく最近楽しくなってきた。

「料理とかしてんの?」

料理はあまり得意ではない。

でも、一人暮らしを始めたのを知った、職場のおっちゃんやおばちゃん達が、家で取れた野菜をくれるようになった。
この野菜が高騰しているご時世、とっても有難い。

その野菜たちを使って、この時期はもっぱら鍋を食べている。

そんな話をしていると、やっと料理が運ばれてきた。
メニュー通りの豪華で目にも鮮やかなお膳が広がる。

店員さんが「お待たせしまして、すいません〜」と余裕がなさげだ。

座った頃より、店内が混み始めて今や外にも並んでる。

店内を見渡していると、目の前に航平がおちょこを差し出してきた。

「ありがと」

徳利から注いでもらって、今度は返そうとすると。

「俺、いい。車だから」

え。そんな。私だけ?

「えー。いいの?」

お互いお酒、特に日本酒好きで。
そこから、何度か一緒に食事をするようになったのだ。

いいの?とか聞いときながら、睦美は飲むのを辞めるつもりはない。

「じゃ、遠慮なく。いただきます」

いい香りが、鼻をくすぐる。

はー、きっといいお酒だ。

チェーン店とはいえ、飲食店関係に勤める航平のチョイスは、いつも間違いがない。

「ん〜、美味しい〜」

そうだった。今日は、思いっきり飲むつもりで。

文乃が珍しく、
「相談したいことがあるから、私が車を出して帰りは送るから!睦美は、思いっきり飲んでいいから!」

そう言うから、電車とバスを乗り継いでこのモールに来たのに。

「だろうな」

航平曰く、なかなかレストランでは珍しいお酒らしい。

しかし、その声にはあまり悔しさは滲んでない。
むしろ少し嬉しそうに口の端が上がってて、またお酒を注いでくれる。

なんか...こんなに笑う人だっけ?

いや、今でも無表情に近いぐらい、全体的にクールなカンジだけど。
それでも、なんだか、前とはちょっと違う気がした。
 
「なんか、雰囲気ちがうね」

「そうか?」
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