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ガーネット弐番館
第7章 unusual
田辺とは航平のことだ。

かなりオドオドしていたのだが、店員さんがとても優しくご案内してくれる。

「大丈夫ですよ。こちらへどうぞ」

煌びやかで、だけど落ち着いた店内の奥へと案内される。

着く少し前に遅れそうなのも電話してあったらしい。

「どうぞお手に取って、ゆっくりご覧ください」

目の前に置かれた指輪の数々は、どれも目が眩むほど煌めいている。

ウワサで聞いてはいたが、お値段にも目が眩む。

手にするのも躊躇われたが、こうなったらヤケだ。

こんな指輪をお試しでも手にする機会なんて、そうそうあるもんじゃない。

冗談でもなんでもいいや、という気になってきた。

別に本当に買うワケじゃなし。

「こちらは当店一番人気のお品です」

そう言われた指輪は大粒のダイヤが光るシンプルなものだった。

といってもダイヤの光があり得ないぐらいキラキラと綺麗で吸い込まれる美しさだ。

店員さんが、カラットがどうのとか、カラーがどうのとか細かい説明をしてくれているが、良くわからないまま、相槌をひたすら打つ。

「どうぞ。是非おつけになって」

とスムーズに左薬指にはめてくれる。

指輪と照明の効果だろうが、睦美の指が一気に華やぐ。

手を掲げたり、なるべく遠くにもっていったりと、角度を変えて見入ってしまう。

アクセサリーには、というより宝石にあまり興味が無かったはずなのに、やっぱりダイヤモンドには人を惹きつける魅力があるんだろう。

他の指輪も見てみるが、結局この指輪に戻ってしまう。

「とってもお似合いですよ」

店員さんのお世辞も、気にならないほど。

「いいじゃん、それ」

少し息を切らして、航平が現れた。

夢の中に居たのが、一気に現実に引き戻される。

「すいません。遅くなりました」

時計を見ると、睦美がお店に入ってゆうに30分以上経っていた。

「大丈夫ですよ」

店員さんは、にこやかに睦美の時と同じ指輪の説明を始めた。

航平は何やら熱心に聞き入っているが、現実に戻った睦美はそれどころじゃない。

はめている指輪を外し、そっとふかふかのトレイに戻した。

「ん?」

ん、じゃないし!

「どうかされましたか?」

店員さんも訝しがっている。

「いや...。あはは」

笑うしかない。
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