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ガーネット弐番館
第7章 unusual
内示がおりるまで、有給扱いで自由にしていただけで、クビになっていたわけではなかった。

睦美がずっとアパートに居ると思っていた日のいくにちかは、その現場に顔を出していて。
昨日の金曜は、現地の村役場の人達と軽く打ち合わせと懇親会があったのだ。

村のお偉方にしこたま飲まされて、代行でアパートに帰ってきたのは、やはり朝方だった。

「昇進って言っても、これからのが大変だろうけどな」

今までの街中のチェーン店的な経営などとは全く異なり、閉鎖的な田舎町での1からの立ち上げになるのだから。


しかし、睦美のアパートからほど近いのはー。

「...偶然?」

「んな訳ねーだろ」

今回のプロジェクトの場所を聞いて、それならと立候補したのだ。

「事故った時に、すげー後悔した」

航平の手が睦美の頬に伸びてくる。

仕事に追われて、睦美と連絡取ってなくて。
事故になった時に一番傍にいて欲しかったのに。
連絡してみて、ブロックされてて。
やっぱり近くにいないとダメだと思った。

「あの時俺、フラれたとばかり思ってて」

...ん?

「まさか待っててくれたなんてさ。だから俺ー」

んんんん????

頬にあった航平の手を掴んで、下ろす。

今にもキスしようと近づいていた航平の動きが止まる。

「...待ってない」

「ん?」

「っていうか、フったのはそっちじゃん!」

「はあ??」

そもそも何回かデートしただけで、付き合ってもないし。
ブロックしたのだって全然連絡なかったからだし。
付き合ってたとしても、1年も放ったらかしとかありえないし。
どう考えても...。

「付き合ってた?嘘でしょ。付き合おうとか、そんなの言われてないし!」

「は?何言ってんの。言ったよ、俺」

へ??

記憶にございませんけど!?
そんなの、言われたら覚えてるわよ!!!

「いつ!?」

「焼き鳥屋行った時」

焼き鳥屋?って、確か...2回目のデートの時だ。

記憶を手繰り寄せる。

「マジで覚えてナイのかよ」

「...ホテルに誘われたのは、なんとなく覚えてるけど」

覚えてるのはー。
焼き鳥屋から駅までの帰り道で、ホテルに行こう的な事をやんわり言われて。
ありえないと思って、はぐらかしてー。
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