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ガーネット弐番館
第1章 再会
「どうも...」

ぺこりとして、人混みに紛れようとしたものの、無理だった。

「孫たちよー。ほら、こんばんはは?」

今井さんの周りには、人が多くどこからどこまでか分からないが、お子さん家族と、ちびっこがわらわらしている。

「こんばんは〜!!」

「こんばんは」

ここは無難に挨拶を済ませて、にこやかに立ち去ろう。

「あら。ちょっと、ちょっと待って」

なんと、椅子から立ち上がり追いかけてきた。

「ほら、中野さん。気になってたの。あの書類、まだかしら」

「...ああ。あの書類ですね。今度持っていきます」

早く切り上げたい。

そして、どうぞ待っているお孫さんたちの所に戻って欲しい。

よりによって、なんでこのタイミングでこの人に出会ってしまったのか。

会計も混んでいるのか、航平がまだお店から出てこないのが幸いだ。

「お忙しいとは思うんだけどね〜。ほら、あそこの大家さんがね、心配してらしてて〜。もう半年にもなるのに、書類が出せないのは、何か理由があるんじゃないかしらって仰ってて〜。私はそんな心配はしなくても、中野さんがしっかりした方だと、お伝えしてるんだけどぉ。あの方、心臓を悪くされてるでしょう?だから、早めに安心させてあげたいのよね〜」

マズい。これは止まらない。
書類なんか適当に書いて出しておけばよかった。

悪い人ではないのだが、今この場所では1番会いたくない人なのに。

マシンガントークをしつつも、そわそわしている睦美に気づいたらしい。

「あら。どうかされて?」

「いや。ほんっと、すいません。持っていきます!本当に近いうちに!」

なんとか、なんとか切り上げるしかない。

航平が出てくるまでに!

「どうした?」

背後から航平が心配そうな声を掛けてきた。

「あら?あら...。あら!!」

マズい。

冷や汗が滝のように背中を流れる。

「ひょっとして、彼?」

「いや...。その」

聞いときながら、おばちゃんは航平にかぶりつきだ。
睦美の制止など全く効果ない。

「あっらー!!!どうも〜。はじめまして〜!私、今井です〜!!あら、貴方が!そう〜」

「あ、どうも」
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