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MILK&honey
第16章 ……聞かなかった事にしよう。

「るり……お兄さんのお仕事、嫌いって言ってるでしょ?」
「うん」

 道案内や雑誌で、買収しようと思った訳じゃないけど。
 姫ちゃんは駅に向かって歩きながら、るりちゃんの内緒の話をぽつぽつ口にし始めた。

「最初は、そんなでも無かったの。周りに知られて、ごたごたが増えて、そのうち、嫌がらせされるようになって……」
「……ああ」

 そう言って泣いてたな、るりちゃん……。

「だから、嫌いだって……もう、余計な事に関わりたくないって……。なのに、メンバーに好きな人が居るなんて分かったら、きっと凄く叩かれるから……絶対、言わないって。それはそれ、これはこれって、決めたんだって」

 そっか。そういう事情が有ったのか。
 学校って……女子校って、怖ぇな。

「そっか……仕方ねーのかもなー。兄貴の仕事仲間のアイドル的なイケメンが好きなんて言ったら、騒ぎになりそうだしなー」
「ふぇ?」

 姫ちゃんは鳩が豆鉄砲を喰らった様な顔になり、急に立ち止まった。

「どした?姫ちゃん」
「……イケメン?」
「……え?」

 雑誌を抱えた姫ちゃんの眉が、皺の跡がつくんじゃねーかと心配になる位、顰められた。

「るりの好きな人、イケメン……では、無いですよ?」
「は?」

 イケメンじゃない……だと……?

 巧も利人も朔も、イケメン特集やランキングに載る様な奴等だ。売り出す時のキャッチフレーズに「三人のイケメン」って言葉が入ってたくらいだ。
 もしかして、姫ちゃんの男の好みが、世間から遠く離れて偏ってるのか……。
 そう思ってたら、姫ちゃんが可愛い声で爆弾を落とした。


「だって、るりが好きなのは、ボーカルの人だもん。」


「え゛……?」


 ……ちょっと待て、姫ちゃん……
 それ、おかしいだろ……


「……えっと……姫ちゃん……?」
「はい?」


 言いにくい。
 口ん中がカラカラだ。
 とりあえず、唾を飲み込む。
 ……で、思い切って、言……


「……ボーカルは…………女…………だよね……?」



 

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