この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
MILK&honey
第16章 ……聞かなかった事にしよう。

「っだいま……」
「お帰りなさいませ」
帰らねー訳には、行かなくて。
それに、ただぼーっと歩いてたら自動的に、というのも有って気が付いたら家に着いてて、黒田さんに挨拶されてた。いつもなら挨拶した上で、るりちゃんがどんくらい前に来たかとか、確認すんだけど。なんにも無しでエレベーターを呼び、来たエレベーターにぼーっと乗り込む。
るりちゃんは、ヒカリが好き。
しかも、憧れてますとかそういうんじゃなく……ぎゅーとかちゅっとか、しちゃう様な意味で。
聞かなかったことにしたいと思えば思うほど、頭の中にはその事ばっかり。
るりちゃんは、ヒカリが好き……
るりちゃんは、ヒカリが好き……
るりちゃんは、ひか……
「ただいま、るりちゃ……」
エレベーターが止まり、足が掃除の面倒そうな絨毯を踏み、部屋に着いてドアを開け、挨拶を……しかけて、止めた。
テーブルには、ラップがかかった冷めても良いおかず。
茶碗とお椀と湯飲みがお盆に伏せてある。
キッチンから、温かくて美味しそうな匂い。
『お帰りなさい、かーさん!!』
いつもにっこり笑って出迎えてくれる、るりちゃんの姿は……見当たらなかった。

