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MILK&honey
第17章 「ありがとう、お世話になりました。」

「体調管理のためにも、毎日外には出たいし。たまには、どこかでご飯しよ?」
「うん!!嬉しい!いつにする?どこ行くー?」
嬉しそうに言うヒメに、笑い返しながら。
私はやっぱり心のどこかで、うっすら淋しさを感じてた。
*
「ただいまー……っ!!」
ヒメとのご飯から帰って来て、かーさんちの玄関を開けた。
誰も居なくても声を掛けちゃうのは、習慣だから……だけど。
玄関に、かーさんの靴がある。
だらしなく脱ぎ捨てられたそれと自分の靴をうずうずしながら揃えて、リビングの扉を開けた。
「か」
かーさんは、ソファにうつ伏せになって半分落っこちそうになって、すーすー寝ていた。
でっかい鞄が傍に置いてあって、ファスナーが開いてTシャツがはみ出てる。洗濯しようと思ったまんま、寝ちゃったのかな……
「……ひげっ」
そーっと近くに寄って見ると、無精ひげが伸びていた。可愛い……って思うのも、変かもだけど。恥ずかしいようなくすぐったいような気持ちがする。寝てるから遠慮なくじろじろ見ちゃう。
「おかえりなさい、かーさん?」
ちっちゃい声で言ってみる。
帰ってくるって教えてくれたら、ご飯する日を変えて貰うか、せめて、早く帰って来れたのに。そしたらちゃんと起きてるかーさんに、お帰りなさいって言えたのに。
「……先に、言ってよー」
八つ当たりで、ひげのあたりをちょっと摘まんでみる。八つ当たりと、起きてくれたりしないかなーっていうのも期待して。
「……ぅ……」
でも、かーさんは、ちょっと唸っただけで、起きなかった。
眠ったまんま、ソファの下に落ちてた脚を持ち上げて、器用にくるんと丸くなった。

