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MILK&honey
第17章 「ありがとう、お世話になりました。」

   *

 冷たくなるまで手を洗い続けてた私は、静かにリビングに戻った。
 参考書やノートや持ち物を片付けて、手当たり次第全部、鞄に詰めた。

 ここに居ちゃ、だめだ。
 つらくなるだけだもん。
 早く、どっかに行かないと。
 かーさんと相手の人の事を、全然忘れられるようなどっかに……

 ふと、ゴミ箱に目がとまる。
 さっきの、つけまつげ……もし、捨てたのが、見つかっちゃったら。


『あれー?るりちゃん、それ拾って捨ててくれたの?ごめーん!あいつ、だらしなくってさー……そこも可愛いんだけどねっ!へへっ!!』

「……!!」


 また、有りそうすぎる妄想しちゃったっ……!
 そのせいでゴミ箱がぼんやり見えなくなって、訳わかんないくらいムカムカした。

「……ばかっ!」

 気付いたら、ゴミ箱を蹴っ飛ばしてた。
 はっとして、かーさんの様子を見ると。

 ……ぐーぐー、さっきよりもずっと良く寝てる……!!

 しゃがんでゴミ箱を起こして、ゴミを拾って、中に戻す。
 その途中で、つけまつげのティッシュが見つかっちゃった。それだけは、ゴミ箱に入れずにそのまま残す。
 それをトイレに持ってって、蓋が開くのが待てなくて強引に手で開けて乱暴に投げ入れて、ボタンを連打して、無理矢理流した。
 誰かのつけまつげなんか、どっかに流れてっちゃえば良いっ……!

 トイレ壊れたらどうしようって頭をほんの少しかすめたけど、そんなの知らない。
 かーさんがこの人のこと私に隠してたのが、いけないんだからっ……!!
 もう、ここに彼女呼んだり出来ないように、トイレなんか、壊れちゃったら良い……!

 流れ終わって、ちゃんと蓋が閉まっていった。
 ……壊れてないみたい。
 私は自分のした事の馬鹿無意味さに落ち込んで、リビングに戻った。
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