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MILK&honey
第17章 「ありがとう、お世話になりました。」

 リビングに、戻った。
 寝てるかーさんを横目で見ながら、さっき細くしたノートの切れ端を手で開く。
 折り皺を撫でて、なるべく平らにする。

『もう来ません、ごめんなさい。
お世話になりました、ありがとう。』

 皺の残る紙にメモを書いて、テーブルに置いた。

 もう一回、かーさんを見る。
 もう、こんなの、最後かもしれない。

 爆睡してるかーさんを見るのも、
 二人きりで部屋に居るのも、
 無精ひげの顔を見るのも、
 みんなみんな、最後かも。

 それどころか、このお部屋に来るのも、最後かも……
 そーっと、ソファの近くに寄った。

「かーさん……?」

 呼んでも、ぴくりともしない。
 ふにゃんと緩んでる口元を見る。
 話してて時々こんな風にふにゃって笑うの、大好きだったな……。
 これも、最後……。
 半開きの唇に、そっと近付く。

「……っ!!」

 ほんの少し触れた瞬間、反射的に離れた。
 今更何してるの、私。
 かーさんとの最後が、私の初めてになっちゃった。
 かーさんは、一生、全然、知らないだろうけど。

 なるべく静かに立ち上がって、テーブルの上のメモを手に取って眺める。
「もう来ません、ごめんなさい」をちぎり取って、ポケットにしまう。

 残ったのは、
『お世話になりました、ありがとう。』だけ。

 ご挨拶は、これだけでいい。
 良い思い出の分だけで。

 鞄を持って玄関に向かってたら、目の前が滲んで来た。廊下を濡らさないように、急いで玄関を出て、鍵を閉める。
 廊下にぽたぽた滴を垂らしながら、エレベーターに向かう。
 絨毯、しょっぱくなったかも……お掃除の人、ごめんなさい。

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