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MILK&honey
第4章 「私の御守り」
私より慌てていて、私より動揺して、私より、ショックを受けている。
優しくて、お節介で、感情が豊かなヒメらしい。
……けど、ごめん。私は絶対、騒ぎ立てたりしたくない。
相手の思うつぼになんか、はまってやるもんか。
「るり……でも……」
「いいの。こんなの、洗えば落ちるし」
まだ辞書が落ちたままだけど、もうヒメの頭の中からは辞書は消え去って、卵で一杯になってるだろう。
仕方ないから、自分で拾う。……でも、手が震えてて、うまく拾えない。
悔しいのか、怒ってるのか、どっちで震えてるんだろう。恐いっていう理由だけは、無い。絶対有って欲しくない。
「ごめん……私が遅くなったから」
辞書を拾って、しまっていたら。
ヒメがハンカチを制服のどこかから探し出して、背中の汚れを拭いてくれた。
「ううん。私がもっと気をつけてたら良かっただけだもん。……ごめんね、ハンカチ汚して」
「ハンカチよりも、自分のことを気にしてよ!こんなの、ひどい……料理部の子……?」
「違うかも。今なら料理部の子じゃなくても、誰でも出来るよ」
うちの学校には料理部がある。食材を自由に持ち出せるのなんて、いつもはその子たちくらいなんだけど。
今週末は、文化祭だ。
料理部は、今週に入ってからずっと、販売用のお菓子を大量に作ってる。もうお祭りが始まってるみたいな大騒ぎだから、そこから卵を持ち出すのなんか、誰にだって簡単に出来るだろう。