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MILK&honey
第18章 俺も、毎日、泣いてんだけど……?!

ボーカル……?
ボーカル、って……歌うのか!?
「無茶です!!俺、音楽は5段階評定で2以上取ったことねんですよ!?」
3(ふつうです)を付けるにはちょっとね、って事で、2。高校入って音楽やらねーで済む様になるまでの、俺の定位置だ。
「大丈夫、大丈夫!」
「大丈夫じゃねーですよ!俺、それ系の芸事はじーちゃんに仕込まれた故・江戸屋猫八師匠の真似しか出来ねーし!!」
「それで良いんだって。歌わなくって、大丈夫!」
「……へ?」
「おじーちゃんに仕込まれたのよね?それよ、それ」
……それって、どれ?
「いーい?聞いた音を、そのまま真似しなさい」
「へっ?」
「それなら、出来るでしょ?」
「……まあ……一応……?」
「よし!決まりねッ!!ちなみに真似して貰うのは、これ!!」
そう言って先輩が取り出したのは、「稀代の歌姫」と言われていた女性歌手のCDだった。
「っはぁあああああ!?なんで女!?」
「大丈夫!!光なら出来る!!」
「……いっそ、名前もヒカリにしたら?」
俺が白目になりながらばんばん肩を叩かれてたら、スカした工藤巧がとんでもねー事を呟いた。
「……っはぁああああああああ?!」
「それ、採用!!タクちゃん天才!!今からあんたはバンドやる時は、光じゃなくて、ヒカリよ!!」
「…………!!!!」
橋本先輩は、両手を組み合わせて宙を見つめた。
「……良い……売れる……!ウケる未来しか、見えない……!!」
預言者橋本と化した先輩は、萎えたり疲れたり驚愕している俺らを見回し、キッと眦をつり上げた。
「よし!衣装もそれに合わせなきゃ!テーマは、『歌姫と三人の従者』!!」
「ちょ、橋本先」
盛り上がりまくった先輩の耳には、弱腰な抗議なんて届く訳が無く。
「よっしゃー!!バンドやるわよぉおー!!」
「お、おお……」
「……おー……」
「おぉぉおおおお?!」
……これが、女装した俺がボーカルを務めるという、とんでもねーバンドの始まりだった。

