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MILK&honey
第24章 ずっと君を見ていたい
「お待たせしてすみません、光さん」
「いーえー、ちっともー」
朔……じゃねーや、「ハジメくん」は、涼しい顔で俺に歩み寄って来た。
「僕」呼びやら眼鏡で、優等生ぶっているせいか。
生徒の家族のふりをしてるせいか。
如才ない対応のせいか。
……それとも、顔が良いからか。
一瞬ドキッとさせられたけど、それ以外では受付係の対応が、俺の時より格段に柔らかかった。
「……ハジメくん?」
「何ですか、光さん?」
通れて当然みてーなふてぶてしい態度にムッとする。
「なんか……狡く無い?」
「別に」
……「別に」だあ?
……くそう……!!
俺も、るりちゃんのお兄ちゃんに、なりたかった……!
だが、巧は面談に来たりしてたから、教職員に面が割れてる。なりすますのは、無理だったのだ。
恨めしさと羨ましさでじとっと見てたら、朔が小声で囁いた。
「……ハジメってどう書くか知ってますか?晴れるに慈しむに愛って書いて、ハジメ。」
晴れるに、慈しむに、愛……晴慈愛か。
……なんだかキラキラしてんな。
「妃愛乃って名前がマシに思えるレベルですよ……どんだけ当て字好きの親だ」
……はいはいはい。
良いじゃん、どんな名前でも、どんな字でも。
「弟」で、無事に受付通れたんだから。
朔のわざとらしい敬語での呟きを聞きながら、俺らは卒業式の会場に足を踏み入れた。