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MILK&honey
第24章 ずっと君を見ていたい
「朔さん」
「へっ?」
「あ?」
「あ!やだ、るりっ!」
るりちゃんは朔の本名を呼び、後ろに隠れてる姫ちゃんの後ろにくるっと回った。朔の前に出てしまった姫ちゃんは、気まずそうにもぞもぞしている。
「ヒメを、宜しくお願いします」
「……ああ」
姫ちゃんのじたばたに知らん振りをしたるりちゃんが、相変わらず不機嫌顔そうな朔に、姫ちゃんの陰からぺこっと頭を下げた。
「かーさん?」
「へっ?」
俺も、もう松森さんじゃねんだ?いいの?
姫ちゃんを置き去りにしたるりちゃんが、ぴょこんと軽い足取りで俺の方に来る。
「お待たせ、帰ろ!」
「あ、うん」
「じゃあね、ヒメ。また明日連絡するね」
「るりぃ……」
「ほら、行くぞ」
「う……」
市場に引かれて行く仔牛の様な目をして朔に連れられて行く姫ちゃんに、るりちゃんはにこやかに手を振った。
訳わかんね……。
何がどうなってんだ、あの二人……。
「かーさん?」
「へい……?」
はい、とへ?の間くらいの、クッソ間の抜けた声が出た。
「帰る前に、お買い物していい?」
「あー……うん、もちろん」
るりちゃんはにこっと笑うと、学校の前の坂道を大通りの方に下りていった。どこで買いもんすんのかと思って付いてったら、大通りの向こうに小っさいスーパーが有る。
「あそこ?」
「うん」
信号を渡って、スーパーに入る。入ってみると奥に細長く、意外と広い。高級食材とか惣菜とか弁当とか有って、コーヒーやパンのイートインも有る。
ここで姫ちゃんと寄り道したりしてたのかな、るりちゃん……
そんなに沢山買わないよと言われたけど、荷物が多いからカートを用意して、下の段に鞄とかを入れた。
カートを押して、青果コーナーを……
「!るりちゃんっ!」
「なあに?」
「俺、ちょっと、抜けていい?!」
ぽーっとして忘れてた用を、思い出した……!
「いいよ?ここの出口で待ち合わせでいい?」
「うん、ありがと!」
るりちゃんに見つからねー様にそーっと、さっき見付けた売り場まで行く。
途端に目に飛び込んでくる、場所に似合わぬデカい貼り紙……
……がっくり。
立ち直れ、俺。がっくりしてる時間はねーよ。
気を取り直した俺は、またるりちゃんに見つからねー様に、こそこそスーパーの外に出た。