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借金のカタに妻を差し出しました
第1章 借金
弁護士がやって来たのは、16時ちょうどだった。

年齢は35歳の和明と同じか、年下に見えた。

瑞樹、和明、弁護士の話は、バックヤードで行われた。

話し合いに前だって、弁護士からは、矢那の行っている事業についての説明を受けた。

矢那は、居酒屋、バー、キャバクラなど水商売で財を成し、不動産、運輸などにも手を拡げ、その名前を聞けば瑞樹にも、和明にも思い当たるものだった。

話しの本題は、矢那はこの地域のコンビニ3店を買取、新にコンビニ事業会社を立ち上げ、夫婦をその会社で雇い、債務も事業会社が引き継ぐ内容であった。

一通り話しを終えた弁護士は、最後に自分の意見を付け加えた。

「これ以上の好条件は無いでしょうね。矢那がなぜコンビニ経営しようとするのか、理解に苦しみますが、あとは、お二人の承諾だけです。返事は急ぎません、ゆっくり話し合って明日以降で結構です。」

弁護士は帰り支度をし、裏口のドアの前で振り返った。

「この後、矢那から連絡があると思います。矢那とご夫婦の個人的取引に私は一切関知しません。その上で返事を決めて下さい。」

弁護士が出て行って直ぐに、瑞樹のスマホが鳴った。画面には昨日の電話番号が表示されている。
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