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人工快楽
第4章 喪失と葬送
 男の言葉に返すことも視線を送ることもなく、わたしは煙の行方だけを見つめていた。

 煙がだんだんと薄くなり、そろそろ燃え尽きてしまう頃合いなのかなと思った。

「わたし、お母様を死姦するつもりだったのよ⋯⋯」

「ええ、私もお嬢なら間違いなくそうするだろうと思っていたんですがね」

「いつもみたいにめちゃくちゃに犯して、いつものわたし達らしくしようとしてたのに⋯⋯」

 お母様が好きだった事を全部するつもりだった。

 いっぱいキスをして、いっぱい眼球を舐めてあげて、真央のおまんこでお母様の顔や全身をマーキングして、おしっことうんちを味あわせて、千切れるくらいに乳首やクリトリスを噛んで、おまんことアナルには腕を突っ込んで、他にも色々してあげて、最後は広がったおまんこに頭から入るつもりだったのに。

「なんで出来なかったんだろ⋯⋯」

 声にならない呟きは自問でもあったが、それが自分への責めなのか後悔なのかは分からない。

 ただあの時、お母様の死顔を見た時に感じたのは、欲情ではなく愛しさだった。

 それは、お母様とわたしが完璧に隔たった瞬間でもあった。

 感覚も感情も生命の総てが情欲で性愛で被虐であり、死ですら性であったお母様に比べて、欲情ではなく愛情を感じ優先したわたし自身の限界。

 お母様と同じ遺伝子を持ちながら、感覚も感情もお母様に至れない存在。

 同一の個体へとなり得ない現実。

 それは、どれだけ自分を傷つけても快楽ではなく痛みしか感じなかった事実。

 頭と心でお母様を理解していても、身体が同化を認めずに同一が叶わないわたしという個体。

 やがて苦もなく辿り着くであろうこの思考の結末の影にわたしは怯えた。

 怯えて思考を閉ざした。

 駄目だ。

 そこへ至ってはいけない。

 そんな馬鹿な答えはない。

 だってわたしは⋯⋯。

 わたしはこれ以上その思考の先に行かないように、必死に別のことを考えるようにした。

「結局、お母様って何歳だったのかしら」

 それでも結局は考えることはお母様のことだった。

「医学的見地で言えば、恐らく27か28歳くらいかと」

 わたしが14歳だから、今のわたしくらいの時にわたしを排泄した事になる。

「そっか⋯⋯」

 特に思う事もない。
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