この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
道化師は啼かない
第1章 序章 這う狂気

「また新聞に出てたわよ。早く捕まればいいのに」
 投げられた新聞を受け止める。
「またですか……鬱陶しい屑ども」
「聞こえてるわよ」
 ハルは作り笑いをして紙面を広げる。
 大きく見出しに書かれたいつもの文字。
『連続殺人怪事件--新たな犠牲者』
 廃ビルの現場が写真で載っている。
「場所選んだらどう?」
「食事の場所は気にしませんし」
「そうじゃなくてさ。もっとこう……なんていうんだろ」
「なんです? 胡桃さんらしくもない」
 名を呼ばれた彼女は頬杖をついて、むうっと唸る。
「あたしには理解できないんだよね。なんでそう食い散らかすみたいに派手な殺しをするかな」
 ああ、と低く相槌を打ち、ハルは丸テーブルに背中を預け天井を見上げた。
 長い足を組んで。
「獲物が暴れるのを見るのが好いんですよ……」
「サイテー」
「わかってるくせに」
 胡桃は咳払いをして、空になったグラスを片付ける。
 その後姿を眺めながら机の縁に指を這わせる。
「今夜も仕事?」
「ええ。三人依頼されましてね。最近は依頼ばっかだから世界に優しいですよ、僕」
 投げられたおしぼりを膝を立てて弾く。
 胡桃は二本目を振りかぶったが辞めた。
「レイプするかしないかの違いでしょ」
「心外です」
 ハルは眼を閉じて息を吐く。
「ちゃんと気持ち良くはさせてるんですよ」
「本当に人でなしよね」
「じゃあどうしたらいいんです……」
 小さな力の抜けた声でそう返してから、ハルは手を上げた。
「何人か覚えてるの?」
 指先を伸ばして握ったり開いたり。
 意味もない行動なんだろう。
 胡桃の質問も聞こえないふりをする。
「そろそろ開店だから出てってくれない?」
「ふっ……僕はいつ来たら歓迎されるんでしょうね」
「いつでもあんたは厄介者だっての」
 鞄を持って身を起こし、伸びをする。
 一度は出口に向かうが、ふっと思い出したように振り向く。
「なによ」
「今日でしたね」
 尋ね返す前に、彼は扉の向こうに消えた。

 カレンダーを確認した胡桃は口を押えた。
 涙を堪えるように。
「本当にサイテー……」
 今日は、彼女の家族の命日だった。
 正確には、胡桃がハルに仕事を初めて依頼した日。
/119ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ