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道化師は啼かない
第4章 錯覚と残り香

「なんで邪魔すんの。あいつって個人じゃないの」
 ハルが去った後を見て毒づく。
 路地の出口をフードの男が塞いでいるせいで追いかけられない。
 この状況がハルと同じく堪らない直輝は苛々と歯を噛み締めた。
「その個人を追いかけまわしてなにしてるんだ」
「あんた上司?」
「どうだろうな」
 なんだ。
 なんだよ。
 すげえむかつく。
 いらつく。
 あの蕗とかいうガキの罵詈雑言も聞くに堪えなかったが、この男は一言一言が癪に障る。
「今夜は仕事か」
「ねえですけど」
 素直に答えた口を押える。
「ハルの邪魔はするな」
「わかりましたよ」
 また。
 なんで、勝手に。
 言いたくもないのに。
 ギリッと口を噛む。
 血の味がするくらい。
 今度は両手で鼻ごと塞ぐ。
 信じねえぞ。
 怪奇現象なんて。
 絶対。
 地面が揺れる。
 混乱して、視界が定まらない。
 くそ。
 意味わかんねえ。
 そういや、こいつなんでビルの場所までわかってたんだ。
 まさか……
 ハルと会う前から尾けられていた?
 そんなわけないか。
 ないよな。
 眼を擦って、顔を上げる。
「マキって女に手を出すな。そいつがアリスだ」
「……マキ?」
 誰だよ。
 そんな突っ込みも口の外には出てこない。
 その女……かどうかも微妙な奴がなんなんだ。
 大体オレの専門は男だって。
「わかった。覚えときますよ」
 あ。
 少し、わかった。
 ハルがこいつの前で馬鹿丁寧な口調だった理由。
 ため口なんて出来ないな。
 で、誰だよ。
 お前は。
「追ってくるなよ」
 誰が追うか。
「わかりました」
 だからなんで敬語なんだよ。
 男が人ごみに消えるまで動けない脚を睨みつける。

 数分経ったか。
 直輝は深呼吸をして壁にもたれる。
 そろそろ歩けるか。
 路地から出る。
 最悪な気分だ。
 結局あいつは誰だったんだ。
 ああいい。
 考えるのとかだるすぎる。
 とりあえず……
 直輝は携帯端末でマップを起動し、ビル群とは離れた下町に向かった。
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