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道化師は啼かない
第7章 人形はどちら
鏡に布をかけるのは、葬式の日のしきたり。
その意味が今、ほんの少しだけわかる。
言葉にはできないけど。
鏡を覆う布の沈黙に救われることもあるのだ。
白い校舎を眺めながらぼーっと歩く。
「麗菜ー! おっはよん」
「みんみん……おはよ」
「昨日休んでたから寂しかったんだぞ」
「ごめんみー」
「ふふっ。元気になったならよーし!」
包帯を外した手のひらにはまだ傷が残っている。
未海にそれは言えない。
それに、今日がどんなに恐ろしい日かなんて、言えない。
昨日は一日中サイトを漁って二重人格の制御を色々調べていた。
どうやったら乗っ取られなくて済むか。
けど、試そうにも道化は貝を閉じたみたいに全く反応してくれなかったから殆ど無駄足に終わった。
そして、今日は道化が私を乗っ取ると宣言した日。
めくちゃんが、久谷ハルに殺される日。
寒い。
鞄にしがみ付いて歩く。
「ゆありん、心配してたよ」
「やっぱりね」
「だってさ、麗菜あの時ちょっと変だったじゃん」
「え?」
未海が思い出すように左上あたりの宙を見つめる。
「鏡を割るとかも驚いたけどさ。あ、あれは生徒会費で修繕してくれることになったから安心して。動揺してるのもわかったんだけどさ、でもなんていうんだろ……途中から、麗菜が麗菜じゃなくなったみたいな気がしたんだよ、ね……」
足が止まる。
「み、みんみん? なに、言ってるの」
未海がぶんぶんと手を振りながら弁解する。
「ちっちがうよ。別におかしくなんかなってないからね、頭! でもさ、ほら。麗菜とは長い友情でしょ。だからこうフッて空気が変わるのとかわかるんだよ。麗菜ってたまに意識がどっかいってるじゃん、でもそれとは違って一昨日は……別人みたいだった」
瞬きもできない。
今言われたことが脳まで回ってこない。
どうして。
なんで、わかるの。
うれしい?
こわい?
自分の感情もわからない。
ひた隠しにしてきた道化の存在。
それに乗っ取られる恐怖。
だれかタスケテ。
けど、気づかれていいの?
みんみんに。
みんなに。
異常だって。
その意味が今、ほんの少しだけわかる。
言葉にはできないけど。
鏡を覆う布の沈黙に救われることもあるのだ。
白い校舎を眺めながらぼーっと歩く。
「麗菜ー! おっはよん」
「みんみん……おはよ」
「昨日休んでたから寂しかったんだぞ」
「ごめんみー」
「ふふっ。元気になったならよーし!」
包帯を外した手のひらにはまだ傷が残っている。
未海にそれは言えない。
それに、今日がどんなに恐ろしい日かなんて、言えない。
昨日は一日中サイトを漁って二重人格の制御を色々調べていた。
どうやったら乗っ取られなくて済むか。
けど、試そうにも道化は貝を閉じたみたいに全く反応してくれなかったから殆ど無駄足に終わった。
そして、今日は道化が私を乗っ取ると宣言した日。
めくちゃんが、久谷ハルに殺される日。
寒い。
鞄にしがみ付いて歩く。
「ゆありん、心配してたよ」
「やっぱりね」
「だってさ、麗菜あの時ちょっと変だったじゃん」
「え?」
未海が思い出すように左上あたりの宙を見つめる。
「鏡を割るとかも驚いたけどさ。あ、あれは生徒会費で修繕してくれることになったから安心して。動揺してるのもわかったんだけどさ、でもなんていうんだろ……途中から、麗菜が麗菜じゃなくなったみたいな気がしたんだよ、ね……」
足が止まる。
「み、みんみん? なに、言ってるの」
未海がぶんぶんと手を振りながら弁解する。
「ちっちがうよ。別におかしくなんかなってないからね、頭! でもさ、ほら。麗菜とは長い友情でしょ。だからこうフッて空気が変わるのとかわかるんだよ。麗菜ってたまに意識がどっかいってるじゃん、でもそれとは違って一昨日は……別人みたいだった」
瞬きもできない。
今言われたことが脳まで回ってこない。
どうして。
なんで、わかるの。
うれしい?
こわい?
自分の感情もわからない。
ひた隠しにしてきた道化の存在。
それに乗っ取られる恐怖。
だれかタスケテ。
けど、気づかれていいの?
みんみんに。
みんなに。
異常だって。