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実業家お嬢様と鈍感従者
第6章 意中の彼を落とす作戦・その三 汝、彼に気持ちよく話させろ!
いつもそんな風に見ていてくれたのかと思うと、心の中が暖かい気持ちに満たされる。
けれど出来れば紅茶を出すだけじゃなく、自分自身を好きになってくれると良いのだけれど……と思ってしまう。
アンジェラは照れ隠しをしながら可愛く見えるよう口元に両手を添え、わざとちゃかして驚いてみせる。
「まあ……それって言い換えれば、私のことが好きなんじゃないの?」
「違います」
主のからかいに無表情に戻った彼は、すっぱりとそう否定してしまった。
「……手強いわね」
彼女はそうぼやきながらも、彼が入れなおしてくれた紅茶を一緒にソファーに座って飲むことが出来ただけで、最初の――一緒にお茶をする――という目標は達成できて、内心ニヤリとほくそ笑んだ。
二人分用意されたアフタヌーンティーセットも「せっかく用意してもらったのだから食べなさい」と命令して食べさせることに成功する。
「そういえばヘンリーは、お休みの日は何をしているの?」
この際だから色々プライベートな話を聞こうと試みる。
彼も一緒に茶席を囲んでいるからか、いつもより少しだけ態度が砕けて、応えてくれる。
「私ですか? そうですね……読書をしたり、お世話になっている方に手紙を書いたり…、…ロンドンでしたら公園を散歩したり……」
「え、公園をお散歩しているの? いいなあ」
領地では周りは森や草原といった緑に囲まれているが、首都の屋敷には広めの庭があるだけだ。
ロンドンの公園をお洒落して彼と並んで歩けたら最高に幸せだろう。
それにこんなにかっこいいヘンリーの事だ。
一人で散歩させていたら妙齢のご婦人にナンパをされるのではないかと心配でもある。
「公園に行かれたいのですか?」
「ええ、ちゃんと行ったことないもの」
「では今度ハイドパークにお連れしましょう。馬車に乗ったまま楽しんでいただけますよ」
ハイドパークには歩かずとも馬車で回れる馬車道が併設されている。
自分で歩くのさえ億劫な貴族には需要があるのだろうが、それでは町を馬車で通っているのと同じではないか。