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実業家お嬢様と鈍感従者
第6章 意中の彼を落とす作戦・その三 汝、彼に気持ちよく話させろ!
「……私の好みは、貴族のご婦人以外の女性です」
「ふんふん。で他には?」
言外に『貴族の貴女は論外だ』と言った筈なのに、彼女は全く動じず先を促す。
「他には……とは? お嬢様はこれ以上お聞きになられてもしょうがないでしょう。貴女は貴族なのですから」
どれだけ鈍感なのかと、主に対して苛立ちに似た感情を持ってしまう。
「私はヘンリーと結婚出来るなら、家を出るもの。それで、他の好みは?」
彼女はヘンリーの答えにからっと笑ってそう言う。
彼はいつものポーカーフェイスを何とか保ちながらも、声は苛立ちを隠さずそのまま彼女にぶつけた。
「……お嬢様は本当に頭脳明晰なのですか? 万が一貴女と私が結婚したとしても、伯爵家を継げるではありませんか」
「むむ、それくらい知っているわよ。でも私、貴族に興味ないもの。だって自分で稼げるからね」
彼女はヘンリーの苛立ちに全く怯まずそう言うと、片目を瞑ってみせる。
小さい頃から常々貴族にしては風変わりな少女だとは思っていたが、これほどだとは思わなかった。
「……お嬢様と話していると疲れます」
「え……なぜかしら。それより好みは? 外見とかこだわりある?」
全く堪えない彼女から早く解放されようと、ヘンリーはわざと冷たい視線で二十センチの身長差から彼女を見下ろし、主の外見と百八十度違う外見を挙げた。
「……胸と尻が豊満でセクシーで、身長百七十センチ。それだけは最低限必須ですね」
ヘンリーの返答に、彼女は今までで一番ショックを受けているようだった。
「十センチヒール履いたら身長は足りるけど……」
彼女は自分の華奢な体を見下ろして溜め息をつく。
「ヘンリー、牛乳飲んだら胸大きくなるかなあ?」
「知りません」
心底困った様に眉毛をハの字にした彼女は、自分の両胸に手を当ててヘンリーの事を見上げた。
「小さな胸もそれはそれで悪くはないと思うよ?」
「……お嬢様、はしたのうございます」
淑女にあるまじき物言いをぴしゃりといなしたヘンリーに、アンジェラは納得がいっていない顔で、ぼそりと反論した。
「……自分から言い出したくせに……」
「私は男だからよいのです」