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実業家お嬢様と鈍感従者
第6章 意中の彼を落とす作戦・その三 汝、彼に気持ちよく話させろ!

自分のことは棚上げした彼に、彼女はそれでも観念せず執拗に尋ねてくる。

「じゃあ性格の好みとかは?」

面倒になったヘンリーは、咄嗟に聞かれたことにありのままを答えてしまう。

「……努力家で芯が強くて、周りの皆に自然に気を配れるような――」

そこまで口を滑らして彼ははっと気がつき、言葉を失った。

「ヘンリー?」

黙りこんでしまったヘンリーを、彼女は不思議そうに見上げてきた。

「………」

努力家で芯が強い……って。

(私が理想とする異性の性格は、お嬢様に近い……)

そう意識して思い返せば、ポーラにしても「アンジーに似て強い子だ」と思い、気がつけば目で追っていた。

これまであまりにもアンジェラの近くにいすぎたからそうなってしまったのだろうが、こんなことはあまり気付きたくなかったなと、苦々しい気持ちがヘンリーの心の中に広がった。

少なからずショックを受けて、ヘンリーはその場に立ち尽くす。

「そっか。私も少しは努力しているつもりなのだけど、またまだだしな~、気配りなんて全然出来てないし……よし! これから頑張ろっと」
「………」

一人でやる気になっている彼女に、ヘンリーはその場で自分を諦めさせることが何故だか出来ず黙っていると、彼女はなにやら物足りげな顔で彼を見て口を開く。

「それで? ヘンリーは聞いてくれないの?」

「何をですか?」

全く心当たりのない彼は、そう応える。

アンジェラは小さな拳を胸の前で握り締めて、必死に言い募った。

「もう。私の好みに決まっているでしょう!」

「ああ、そうですね。これから結婚相手を探す上でも必要になりますね。どうぞ、殿方に求められる希望を仰ってください。それに近い方を貴族名鑑からリストアップいたします」

ヘンリーはそう言って、たくさん希望を言われても大丈夫なように胸ポケットからメモとペンを取り出し、彼女を促した。主は嬉しそうにニコニコしながら話し始める。

「私の好みはね――優しくて頼もしくて勉強熱心で、信念を曲げずに実行できる人で、でもちょっと硬すぎて不器用なとこもあって……身長が高くてスタイルが良くてかっこよくて、髪はブルネットで、瞳は翡翠の様な綺麗な緑色で……」

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