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実業家お嬢様と鈍感従者
第6章 意中の彼を落とす作戦・その三 汝、彼に気持ちよく話させろ!
ヘンリーは彼女がすらすらと挙げる好みを書き取る手をふと止める。
嫌な予感がしてメモから顔を上げると、彼女は身体の後ろで両手を組み、少し小首を傾げて可愛らしくこちらを見上げていた。
「私の好みは『ヘンリーをもうちょっと甘くした感じ』よ。うふふ」
「はいはい」
ヘンリーは主への返事に相応しくないそれを溜息混じりに呟き、書き取ったメモを破りとると、くしゃりと握り締めた。
彼女は「ひどい!」と喚いてヘンリーの手から強引にメモを取り上げると、綺麗に皺を伸ばして彼の胸ポケットに入れた。
「私からのラブレターみたいなものなのだから、捨てちゃダメ!」
胸ポケットをポンと叩いて満足そうに微笑む彼女に、言い返す気力が削がれる。
脱力したヘンリーは、ぼそりと呟いた。
「いくら近侍(ヴァレット)とはいえ、私へのラブレターを、私に書かせないで下さい……」