この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
実業家お嬢様と鈍感従者
第3章 十六歳の誕生日

「とてもお綺麗です」

彼女の白い肌に映えてとても綺麗だと思い、咄嗟に口にした言葉に、アンジェラはぱっと頬を薔薇色に染めた。

彼女の潤んだ瞳に見つめられて何故か言葉を失ったヘンリーは、主に対して無遠慮とは思いながらも、彼女の蒼い瞳を直接見つめ返してしまう。

「ねえ……ヘンリー……」

「はい、お嬢様」

彼女はとても言いにくそうに、細切れに言葉を繋ぐ。

「……あの……約束、覚えて……いる?」

はっとしてヘンリーは言葉に詰まる。

あの『約束』。

(アンジェラ様の十歳の誕生日に私と交わした、約束――)

「……はい。勿論です」

忘れることなど、ある筈がない。

自分達主従の間でただ一つ、唯一交わされたものだから。

しかしヘンリーの返答を聞いた彼女の表情は、何故かとても怯えて戸惑ったそれだった。

アンジェラの手が寒さのためか小刻みに震えているのに気付き、ヘンリーは彼女の背を押して室内へと導く。

「……ごめんね……あと……一年だから……」

そう呟かれた彼女の言葉は微かにヘンリーの鼓膜を揺らし、強くなった風に攫われて行った。







『私が社交界にデビューする十七歳の誕生日まで、結婚しないこと』


アンジェラが十歳の誕生日に、彼女の近侍(バレット)・ヘンリーを縛りつける為に取り交わした、『約束』。

(約束……か。私もまだ子供だったから、そこまで気が回らなかったのよね……二人の立場が対等でない場合に取り交わされるものなんて、ただの命令と同じなのに………) 

自分の誕生日パーティーから解放されたアンジェラは、重いドレスを引き摺りながら私室に戻った。

レディーズメイドに就寝の準備を整えてもらい、下がらせる。

いつもなら就寝している時間だったが、身体の疲労の割に頭は覚醒して眠れず、天蓋付きの寝台から這い出す。

真鍮の三灯燭台の仄かな灯りが、彼女の凭れ掛かった窓際の硝子にぼんやりと映りこむ。

アンジェラは結露に濡れた硝子越しに暗い外を眺めながら、この『約束』の事の発端を思い起こしていた。



アンジェラとヘンリーは乳兄妹だった。

ヘンリーの一家は代々伯爵家に仕える家柄で、祖父は家令(ハウススチュワード)、父は領地の執事(バトラー)、母は乳母(ナニー)だった。

彼女と七歳離れたヘンリーは、彼女の兄であり、憧れだった。
/106ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ