この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
実業家お嬢様と鈍感従者
第11章 仮面舞踏会

「そっか……。おめでとう、ヘンリー」

静かにそう呟いて、小さな微笑を浮かべた。

「ありがとうございます」

腰を折って主に礼をする。

頭上からアンジェラの弱々しい笑い声が降ってきた。

気でも触れたのかと心配になり顔を上げると、瞳を潤ませた彼女は困ったように笑っていた。

「ふふ……。やっぱり初恋は実らないものなのね」

「……申し訳ございません」

「謝らないで」

苦しくなってそう言ったヘンリーを、彼女はぴしゃりと遮る。

「………」

口をつぐんだヘンリーにアンジェラは肩を竦め、彼の瞳をしっかりと覗き込んでにこりと笑った。

「私ね……。貴方に告白してから毎日、楽しくて仕方がなかったの。やっと私の気持ちを伝えることが出来たから。それに貴方のことを今までよりも沢山知ることができて、もっと好きになったわ……。貴方には一杯迷惑をかけてしまったけれどね」

「………………」

「ありがとう、ヘンリー。私、貴方を好きになって本当によかった。貴方が幸せになる事を心から祈っているわ――」

まさかの言葉に驚きを隠せず、不躾に女主人の顔を凝視したヘンリーに対し、彼女はとても幸せそうに、そして綺麗に笑ったのだ。











ヘンリーの結婚を聞いた日を境に、アンジェラと彼は普通の主従に戻った。

アンジェラは今まで通り軽口も叩くし、ヘンリーも彼女の近侍兼秘書として以前のように自分にお小言を言った。

何もかも彼女が告白する前の状態に戻ったが、ただ一つ以前と変わった事がある。

お互い、相手の目を真っ直ぐ見ることが出来なくなった。

ヘンリーにしてみればアンジェラと顔を合わすことにまだ、気まずさがあるのでろうし、彼女も――自分でもしつこいとは分かっているが――初恋は実らなくても、彼に対する想いを直ぐに無かったことには出来なかったからだ。

忙しないロンドンとは違い、ここオルソープは何もかもがゆっくりとしている。時間の流れ方も、人々の動きも何もかも。

アンジェラはそれを理由にするかのように、父との『契約』に終止符を打つことを、ずっとだらだらと先延ばしにしていた。

/106ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ