この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
実業家お嬢様と鈍感従者
第13章 タイムリミット

父と妹より一足早く母とロンドンのタウンハウスへ戻ると、息つく暇も無く女王陛下への謁見の為の支度が始められた。

オーダーしておいたドレスの仮縫いが上がってきており、アンジェラの体にメイド達が長時間かけて着付けをしていく。

今まで袖を通したことの無い豪奢すぎるドレスには無数の宝石が縫い付けられ、幾重にも重ねられたフリルや、いつものドレスの三倍はある長い裾が、さらにドレスを鈍重なものにしている。

母は目の前のウォールナット製の椅子に腰掛けながら、優雅に仕立屋に改良の指示を与えていた。

そしてその背後には伯爵家お抱えの肖像画家が、将来のノースブルック女子爵の肖像画に取り組んでいた。

「少し歩いてみて下さりますか?」

仕立屋にそう言われ、メイドに手を引かれて一歩を踏み出す。

信じられないくらい重いドレスがアンジェラを捕らえ、そのコルセットで拘束し、自由を奪う。

肩が崩れそうなその重さは自分がこれから背負う、伯爵家そのものの重みでもあった。

(悪くはない。社交界に出て、貴族と結婚して子を成し、伯爵家の未来を繋げる……あの人とその子孫の為に私が出来る、唯一のこと……悪くないわ……)

くすり。

思わず零れた嗤いを聞きとめた母が、アンジェラが喜んでいると取ったのだろう。

立ち上がると頬を緩めて近づいてくる。

「アンジー、ティアラはどれがいいかしらね?」

メイドが次々と試しに載せてくれるティアラの好みを、母が鏡越しにアンジェラに求めてくる。

周りにいたメイドたちがほうと溜息を漏らし「お美しいですわ」と賞賛してくれる。

「お母様が似合うとお思いになられるものを…」

彼女の返事に母が満足げに微笑む。

「イヤリングはどうしましょうね? これなんか貴女の瞳の色が映えて、とても素敵だわ。どう、アンジー?」

母自ら耳にかざしてくれた大きな石のイヤリングに、落としていた視線を上げる。

そこには姿見に映りこんだ、背後の壁一面に飾られた先祖達の肖像画が、胡乱な瞳でアンジェラを見下ろすように存在していた。

驕った醜い自分の心を、全て見透かすような幾対もの双眸。

歯の根が噛み合わなくなりそうなほど、全身が小刻みに震え始める。

それでも彼女は返事を待つ母のために、何とか声を振り絞った。

「……伯爵家に相応しい、とお思いになられるものを……」

/106ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ