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第1章 アリョーナの旅路

「アリョーナちゃん、アリョーナちゃんのつらい気持ちはよくわかるけれどもさ、広いアメリカ社会で女性ひとりが生きて行くと言うことはね、なみたいていの力ではやって行けないのよ…今のご時世はね、リーマン(ブラザーズ・投資会社)が経営破綻して、アメリカ経済の先行きが不安定になっているし、欧州経済も回復のきざしが見えないそのまた上に、中東地域の治安が思うように回復しないまま石油の単価の値上がりばかりが続いている…アメリカ国内の失業率も改善をしているとは言うけれども、そんな世界情勢の中で、アリョーナちゃんはひとりの力だけでやって行けるの？」
「おかみさん。」
「アリョーナちゃん、もう一度ボブさんと話し合ってみると言うことはできないの？」
「どうしてボブさんと話し合いをしなければならないのですか？」
「どうしてって…アリョーナちゃんがひとりで生きて行くことができない場合のことも考えて…」
「ムリよ!!ボブさんはね!!アタシよりも、他の女を選んだのかもしれないわ!!もうどうしようもなくなってしまったのよ!!」

おかみさんは深いため息をついてから「どうしようもないのね。」とアタシに言いました。

アタシはおかみさんに、一定のメドがたったらボストンから出まして西海岸へ移住することを改めて伝えました。

アタシは、一度決めてしまいますと、あとにはひけない性格でありましたので、ボブさんとの話し合いができなくなりました。

その頃、ボブさんはどこで何をしていたのかは分かりませんが、今のアタシにはボブさんのことは見えていませんでした。