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兄貴の彼女/彼の弟(MILK&honey 後日談)
第1章 兄貴の彼女

  *

「いっただっきまーす!」

「頂きます……」

「どうぞ、召し上がれ。……頂きます。」

 泊まる用意をしては来たけど、本当に泊まって良いのかどうか悩んでいる間に、夕食が用意されていた。
 三人で、テーブルを囲む。
 ご飯、味噌汁、焼き魚、煮物……特に派手でも何でもない、家庭料理だ。

 途中でチンと何かの音がして、るりさんが立ち上がった。

「これ、勇くんと光さんに。……それから、これも」

「おー、肉ー!!と、卵焼きー!!」

 兄貴が、ウキウキと皿を受け取った。

「勇、見て見てー!!卵、俺が割ったんだぜ!!」

「うん、見てた。信じらんなかった」

「ひっで!!食べて食べて、旨いから!!大丈夫、割ったのは俺だけど、作ったのは、るりだから!!」

 兄貴。はしゃぎすぎだろ。子どもか。
 るり「ちゃん」の「ちゃん」が取れてんぞ……最初っから不自然だったけどな。
 気が付かなかった振りをして、卵焼きに箸を付ける。

「……!!」

 ……旨い。
 なんだ、これ。

 他の料理もみんな旨いけど、この、卵焼きは。

「あー……すっげー旨かった、ご馳走様……!」

 俺の箸が止まってる間も、兄貴はガツガツ食ってたみたいで。

「光さん、食べ終わるの、早くない?ちゃんと噛んで食べた?」

「大丈夫!卵焼きは、飲み物だから!」

 るりさんと兄貴の会話が耳に入って、鼻の奥が、つんとした。


『光、勇。たくさん有るんだから、よく噛んでゆっくり食べなさい』

『大丈夫!卵焼きは、飲み物だから!!』

『飲み物だから!』

『もう、二人とも……龍や瞬が、真似するじゃないの』


 大分思い出せなくなって来た、母さんの笑う声が甦る。
 元々味付けが似てたのか、兄貴の好みに合わせたのか、分からねーけど。
 母さんと似た味の卵焼きを作れる、兄貴が呼び捨てにしてる、美人で可愛い下宿人。
 
 下宿人って、言い張ってるけど。
 ……こんなん、絶対彼女だろ。

 
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