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彼時々彼女、所によって一時ケダモノ。
第1章 彼時々彼女

*
「あなたが、サクの彼女?」
「はいっ」
向かいのソファに座ったヒメが、固い声で返事をした。
「……で、あなたが、ヒカリの彼女ね、タクミの妹ちゃん」
「はい。ご無沙汰してます、橋本さん」
私とヒメは、大事な話が有るからって、橋本さんのオフィスに呼ばれていた。
橋本さんは、とあるバンドのマネージメントをしている人だ。光いわく「そこそこ売れてる、まあまあ人気のあるバンド」。
光と朔さんは、そのバンドのメンバーだ。そして、橋本さんに言われた様に、光は私の彼氏で、朔さんはヒメの……根元妃愛乃の彼氏。
今日は、朔さんと光も私達と一緒に来ていて、それぞれヒメと私の隣に座ってる。
光は、すごく心配そう。朔さんは無表情だけど、さり気なくヒメの手を握ってる。
「久し振りよねえ、るりちゃん!相変わらず可愛くって良い子ねえ、ぎゅーってしたくなっちゃう!」
「ちょ、止め」
「ストップ、光」
橋本さんの冗談にムッとした光が、朔さんに、待て!みたいに止められた。
「……で、二人はお友達、と」
「はい。」
「そして二人とも、光がヒカリだって知ってしまった、と」
「はい」
私とヒメが頷くと、橋本さんはふーっと溜め息を吐いた。
今ここで話題になってるバンドのボーカルは、ヒカリさんて言う女の人。私もずっとファンだった、憧れの歌姫……の筈だったんだけど。
私とヒメは、好きになった人とお付き合いする事になる過程で、ヒカリさんと光が同一人物だということを、知ってしまったのだった。
「……光がヒカリだって事をちゃんと知ってる人間は、光のご家族以外には、今までは五人しか居ないのよ。私と、メンバー三人。あと、メイクの担当者」
「はい」
「あなた達を、疑う訳じゃ無いけど……知っちゃったなら、これにサインして貰う必要が有るの」
それは、誓約書、と書いてある紙だった。

