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彼時々彼女、所によって一時ケダモノ。
第1章 彼時々彼女

「光がヒカリだと、誰かに言わない。親御さんとか友達とかにもよ?SNSに書き込まない。噂をしない。特にあなた達は友達だから、二人で外でそれらしき事を匂わす話は絶対禁止」
「はい」
「あのう、質問です」
「なあに、根元さん」
ヒメはけろりと、すごい事を言った。
「るりが光さんと結婚する事になったら、ご家族には言っても良いんですか?」
「けっ……!?」
「ヒメのばかっ!!そんな事、有る訳無いじゃない!!」
「え゛」
ヒメのばかっ……光があわあわしてるじゃないっ。
「そお?」
「そうだよっ、もうっ!……すみません、橋本さん。続けてください」
「ん。……もし破ったら、私達が被った損害を賠償しますって内容よ」
「ひでーよ、橋本さんっ!二人はんな事しねーって!」
「光。『ヒカリ』は今や、一大ビジネスになっちゃったのよ。対策した上でバレちゃうのなら仕方ないけど、軽々しくバラすのは、厳禁なの」
「でも」
「光」
橋本さんに噛み付く光の手を握る。
「るり……」
「ありがとう。大丈夫だから」
私は、橋本さんに向き直った。
「ありがとうございます。はっきり言って頂けて、良かったです。今サインしても良いですか?」
「ええ。……その『印』ってとこ、判子じゃなくて、サインで良いわよ」
「大丈夫です、持ってます。……この、保証人は誰に?家族ですか?」
「うーうん。……朔、光。サインなさいな」
「ああ」
「へっ?俺?サイン??」
朔さんはヒメが書き終えた誓約書を取り上げると、さらさらとサインをして、橋本さんに差し出した。
……光は。
「……俺、損害被る対象なのに、賠償支払う人になっちゃっても良いの?」
腑に落ちない顔をしている。
「光。彼女を、助けたく無いの?」
「や!もちろん、助けるし!いつでもどこでも喜んで!」
光は、私が持ってた紙をひったくってサインして、橋本さんに突き返した。
「あの……他には?」
「他?なぁに?」
二枚の誓約書を確かめている橋本さんを見ながら、緊張で震えそうな声を振り絞った。
「御社所属のタレントさんと交際する上での、誓約書です」

