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復讐の味は甘い果実に似て
第10章 それぞれの朝
 だけど、そう言った僕に、彼女が向けたまなざしは、恐ろしいほど冷たいものだった。
「……処女を奪った責任をとる……ってことですか? あたしが、そんなことをダシにして先輩に関係を迫るような安っぽい女とでも思ってたんですか?」
「いや、そんなつもりは……。」
 まずいことを言ってしまった、と、僕は後悔していた。
 だが、一体、今の僕が彼女に何を言えばいいというのだろう。

「まだ、分かんないんですか? 今のあたしと先輩は体で想いを伝えるしかないんですよ。あたし、まだ、先輩のことを好きだなんて胸張って言えるほど、自分の気持ちに自信ないですから。それに、今の先輩があたしのこと、どれだけ好きだって言ってくれたって、信じられないです。あたしは、責任取ってもらったなんて思いたくないし、恵梨の代わりにされるのも嫌ですから。」
 
 彼女は静かに僕を見据えて、はっきりと言った。

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