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復讐の味は甘い果実に似て
第10章 それぞれの朝
 身支度を整えると、僕とひかるは新幹線の時間に合わせて駅に向かった。
 そして、駅の改札の前で僕たちを待ち受けていたのは明日香だった。

「……ひかるから電話をもらわなかったら、見送りにも行けないところでしたよ。相変わらず、黙って立ち去るのが好きなんですね、先輩は。あたしにはさよならもないんですか? あれだけあたしの体を弄んだくせに。」
 少しばかり意地悪な笑みを浮かべて、明日香が僕に言った。

「すまないな。だが、君は彼氏のものだ。僕なんかが、彼氏に黙って君にさよならを言うのは僭越な気がしてね。僕よりも、彼氏と仲良くやってくれ。」
「何だかえらく分別くさい言い方ですね。ま、今のところ、浩二の寝取られ癖は落ち着いているからいいですけど。この間の旅行の話で、まだ、お腹いっぱいみたいですし。おかげ様で、っていうのも変ですが、わたしと浩二は円満ですよ。」
 そう言って明日香が笑う。

 浩二という明日香の彼氏の複雑な性癖に、僕はやれやれと苦笑した。
 当人にとっては、やれやれどころではない気もするが、明日香はそういう彼氏をきちんと愛し、僕との関係にも折り合いをつけているのだ。
 正直に、すごいと思う。

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