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復讐の味は甘い果実に似て
第2章 セリヌンティウスへの宣告
「……それじゃ、君たちの説明とやらを聞こうか。」
 僕は落胆を隠しながら、明日香に説明を促した。
 本来は恵梨から話すのが筋だろうと思ったが、恵梨は来た時から泣きじゃくるばかりで、まともに話ができる状態ではなさそうだった。

「はい、あの日、ちょうどわたしたちのサークルで懇親会があったんです。恵梨も、恵梨と一緒にいた本間君もかなりハイペースで飲んでいたと思います。」

 嘘だとわかっているものをまじめに聞いてもしかたない、とは思ったが、とりあえずは黙って聞くことにした。
 よくある話だ。
 酒で前後不覚になったうえでの事故ということにしたいらしい。

「懇親会が終わって本間君が恵梨を送っていく、と言い出しました。本来なら止めるべきでしたし、いつもなら、そうしていたと思います。ですが、ちょうど春の合宿の宿泊先の選定を本間君と恵梨にお願いしていましたので、送りついでにどこかのファミレスにでも寄って話を詰めてくる、と言われて、止められませんでした。本間君と恵梨は、ダブルスでペアを組んでいて、その気になれば、そういう機会は何度もあったので、わたしたちも大丈夫だと思っていました。」

 大家さんによれば「そういう機会」とやらは、余さず活かしているみたいだけどな、と思ったが、口には出さない。

「結局、本間君と恵梨はファミレスには行きませんでした。本間君がネット予約で安くなる宿泊先があるから、恵梨の部屋のPCで一緒に確認して予約を入れてしまおう、と言って、恵梨の部屋に上がり込んだそうです。それで、恵梨の部屋の中で候補先を調べていたらしいんです。ですが、恵梨の方は本間君が部屋にいるのに先に寝てしまいました。そして、気が付いた時には、ベッドの上で本間君にのしかかられていた、ということなんです。」
「……要するに、不可抗力だった、と?」
「はい。お酒が入っていて抵抗できない状態だったそうで。そういうときに、たまたま新田さんが来たらしいのです。」
 くだらない説明に思わず、ため息が出そうになった。

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