この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
復讐の味は甘い果実に似て
第5章 表と裏 ~明日香の告白~
復讐の道具としての一夜が明け、わたしが自分の部屋にもどってきたのは、昼過ぎという予定を大きく過ぎて15時を回ろうかという時間だった。
別に、意図して遅くなったのではない。
先輩と恵梨は朝のうちに部屋を出ていったが、わたしは疲れのあまり、チェックアウトの時間ぎりぎりまで起きられなかったのだ。
さらに、先輩にもらったホテルのランチブッフェ券をフル活用して、空腹を満たしたのはいいけれど、電車に乗り込むと、そのまま激しい睡魔に襲われてしまった。
結局、気が付いたのは最寄り駅を遥かに過ぎた終点近くだった。
我ながら、あれだけ盛りがついた動物みたいにセックスしてたら、そりゃカロリーも睡眠も足りなくなるのが当然だろう。
だけど、恵梨に見せつけるというきっかけはあったにせよ、わたしは自分のなかに、あれほど激しい性衝動が潜んでいるとは思わなかった。
わたしはこれから、自分のなかに潜むあの怪物のような情欲と向き合っていけるのだろうか、と内心で不安を覚えていたのだ。
わたしが駅をおりて、大きなあくびを連発しながらアパートの前まで来た時、アパートの階段に浩二が座っているのが見えた。
思わず、自分のなかで罪悪感と、昨夜の果てしない絶頂の記憶がないまぜになり、浩二に何を言えばよいのかがわからなくなった。
いや、もう、わたしから何か言う必要はないのかもしれない。
浩二はただ、わたしに別れを告げに来ただけかもしれないのだから。
おそらく、その可能性が濃厚だ。
だけど、それは何もかもわたしのせいなのだ。
大事な人の信頼を裏切ってしまったら、その後は猜疑心という泥沼に足をとられてお互いがもがき苦しむだけになってしまう。
そんな思いを浩二にはさせたくない。
確かに、今朝、バスルームで先輩がいっていたように、好きだからこそ諦めなくちゃいけないこともあるのだ。