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復讐の味は甘い果実に似て
第5章 表と裏 ~明日香の告白~
「……あのさ、昨日の夜、あの人と……したのか?」
俯いたままの浩二の口から、とうとうその言葉が出た。
絞り出すようなか細い声で。
棚からマグカップを出していたわたしの手が止まる。
どう答えればいいのだろう。
だが、わたしの中では、どう考えても答えは一つしかない。
わたしは浩二にだけは、嘘をつきたくなかった。
「……うん……したよ。」
ああ、ついに言ってしまった。
この後に出てくる言葉は罵倒だろうか。
それとも別れの言葉だろうか。
わたしは死刑宣告を待つような気持ちで浩二の言葉を待っていた。
だが、浩二の口から出てきたのは、わたしが想像もしない言葉だった。
「……どんな風にされたんだ?」
えっ、と思わず、わたしは声をあげた。
「……教えてくれよ。あの人に、明日香はどんなことをされたんだ?」
いったい、それを聞いてどうしようというのか、とわたしは狼狽した。
「いや、わたしは浩二から別れ話を切り出されるもんだとばかり……」
「別れないよ。だって俺、明日香のこと好きだもん。」
浩二がこれまでの口調とは変わって、はっきりと私に告げた。
うれしさに目が潤みだし、顔を上げていられない。
緊張から解放されて、立っていられない。
わたしは呆けたまま、俯いて浩二の真向かいに座りこんだ。
「そりゃあ、この2週間、滅茶苦茶考えたよ。俺自身で納得いかないところもあるけれど、明日香と別れようとは思ってない。俺だって、明日香みたいに、サークルの部長とか、そういう立場だったら、同じ選択をするかもしれないし。」
浩二は、いつものように俯き加減で、訥々と自分自身に説くように話した。
ああ、このしゃべり方、この感じ、何もかも、いつもの浩二だ。
あまりの安心感に、改めてわたしは浩二の事が好きなんだ、と思った。
それも、どうしようもないくらいに。
俯いたままの浩二の口から、とうとうその言葉が出た。
絞り出すようなか細い声で。
棚からマグカップを出していたわたしの手が止まる。
どう答えればいいのだろう。
だが、わたしの中では、どう考えても答えは一つしかない。
わたしは浩二にだけは、嘘をつきたくなかった。
「……うん……したよ。」
ああ、ついに言ってしまった。
この後に出てくる言葉は罵倒だろうか。
それとも別れの言葉だろうか。
わたしは死刑宣告を待つような気持ちで浩二の言葉を待っていた。
だが、浩二の口から出てきたのは、わたしが想像もしない言葉だった。
「……どんな風にされたんだ?」
えっ、と思わず、わたしは声をあげた。
「……教えてくれよ。あの人に、明日香はどんなことをされたんだ?」
いったい、それを聞いてどうしようというのか、とわたしは狼狽した。
「いや、わたしは浩二から別れ話を切り出されるもんだとばかり……」
「別れないよ。だって俺、明日香のこと好きだもん。」
浩二がこれまでの口調とは変わって、はっきりと私に告げた。
うれしさに目が潤みだし、顔を上げていられない。
緊張から解放されて、立っていられない。
わたしは呆けたまま、俯いて浩二の真向かいに座りこんだ。
「そりゃあ、この2週間、滅茶苦茶考えたよ。俺自身で納得いかないところもあるけれど、明日香と別れようとは思ってない。俺だって、明日香みたいに、サークルの部長とか、そういう立場だったら、同じ選択をするかもしれないし。」
浩二は、いつものように俯き加減で、訥々と自分自身に説くように話した。
ああ、このしゃべり方、この感じ、何もかも、いつもの浩二だ。
あまりの安心感に、改めてわたしは浩二の事が好きなんだ、と思った。
それも、どうしようもないくらいに。