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復讐の味は甘い果実に似て
第6章 絶望へのいざない ~ひかるの告白~

 先輩から復讐の決行日について、あたしに先輩からメールが入ったのは1月の半ば。
 ちょうど後期テストが始まろうというときだった。
「復讐の日は2月11日、19時。場所は決まり次第、連絡する。」
 メールの文面はそれだけだ。

 とうとう来てしまった。
 もう、後戻りはできないのだ。
 そう考えると、改めて自分の決断がまともじゃないように思えてきた。

 好きな人とお互いに気持ちが盛り上がった結果、お互いに求めあうなかで処女を捧げる、というのが普通なのに、あたしの場合は違う。
 恵梨にだまされた挙句、馬鹿な賭けに乗り、恵梨の元彼の復讐の道具にされて、あたしは処女じゃなくなるのだ。
 人がこんな話を聞けば、間違いなくあたしを馬鹿だというだろう。
 
 だけど、もう、あたしは恵梨を許せなかった。
 恵梨については、これまでにもカチンとくることはたくさんあった。
 平気で、何の悪意もないかのように、あたしの劣等感を刺激してくるのだ。
 サークルの男の子たちとのお酒の席で、あたしの大きいおっぱいのことを、笑いのネタにしたり、彼氏がいないことをからかってきたりとか、そういうことだ。

 恵梨にそういうことをされるたび、あたしはその場を、愛想笑いで切り抜けてきた。
 多分、あたしが恵梨の無神経な一言でどれほど傷ついているか、知っているのは、明日香くらいだと思う。
 だが、わたしに代わって明日香が恵梨に注意してくれても、恵梨はごめんねえ、と茶化すだけで、まともに取り合おうとはしなかった。

 今回だって、最初に明日香や香織と先輩の研究室に出向くときも、あたしはあまり気乗りはしなかった。
 正直に言ってしまえば、ざまあみろ、という気持ちの方が強かった。
 あたしが同行を決めたのは、サークルの部長として、何とか穏便に事を収めようとする明日香を助けたかったからだ。

 だけど、あのカフェで恵梨がしたことは、そういうあたしたちの好意に、唾を吐きかけたうえに、あたしたちを売り飛ばすようなことだった。
 しかも、自分のやったことに何らの呵責も示さないなんて、許せるわけがない。

 必ず、復讐してやる。
 恵梨の目の前で女になって、恵梨を嫉妬の炎で焼き尽くしてやる。

 先輩の復讐計画に乗せられた時に、あたしはそう誓ったのだ。

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