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レディー・マスケティアーズ
第11章 アトス&アラミス ――成城 木庭敦子の屋敷
「あんたたちも最期だから、教えてあげるよ。あの何とかいう小娘を、後腐れがないよう始末してしまえとけしかけたのは、わたしよ。茂たち男は、度胸もなければ、修羅場を潜り抜けた経験もない。金がない、仕事がない、厄介が降りかかった。どうしよう? 姉貴。
困った時は、いつもわたしにすがりついて来た。まったく、男ってやつらは」
 敦子が舌打ちした。
「それに比べれば、かなわない相手に闇雲に挑みかかってくるあんたらのほうが、少しはマシさ。ああ、そうだよ。あんたたちが探しているトーホー開発の裏帳簿は、この家の中にある。まあ、どこにあるかは突き止められないだろうし、万が一見つけたとしても、そのどこが『裏』なのか、あんたらの頭では見抜けっこないだろうけどね」
 木庭敦子が、ガラスを引っ掻くような笑い声を上げる。
「わたしを相手にしたのが間違いだったね」
女主人の後ろには、対空砲まがいの巨根を突き立てたハルクが控え、次の命令に備えて身構えている。わたしたちの負け。その時が来てしまったのだろうか。アトスは這うようにして、アラミスが繋がれている拷問台に辿り着いた。
「アラミス……」
 アトスが、消え入るような声を絞り出す。そして、力尽きたようにアラミスの肩先に崩れ堕ちた。ずっと閉じられていたアラミスの目が、かすかに動いたようにも見えた。
「そこまでかい?」
 敦子が、また笑い声を上げた。
「忍者まがいの格好で家に忍び込んで、大見得まで切ったわりには、何とも拍子抜けだね。あんたの相棒は、ここに着いてからずっと眠ったきりだし、もう死んでいるじゃないかい?」
 ハルクを従えた木場敦子が、肩を揺すって笑う。あんたたちに叶うわけがないのさ。ハルクの怪力にも。わたしの秘めたる力にも……。
「いいえ!」
 その時、弾かれたように、アトスが立ち上がった。
「勝負は終わっちゃあいないわ!」
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