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レディー・マスケティアーズ
第11章 アトス&アラミス ――成城 木庭敦子の屋敷
*
ブン! ブン!
繰り出されるハルクの大きな手を、巧みなスウェーでかわしながら、アラミスは相手との間合いを広げた。
大男は腰を低く下げ、鷲が翼を広げるように両腕を高く前に掲げている。
ブラジリアン柔術かレスリングに多い構えだ。軍隊、それもレンジャー部隊を経験者のようね。
両手も両足も筋肉で盛り上がっている。鋼鉄をまとったような頑強な体は、パンチやチョップを見舞ったところで弾き返されるに決まっている。
それに、あの熊のような手で組み止められたら、即座に首の骨を折られてしまうわ。ならば、このターミネーターの弱点を責めるしかなさそうね。
軽くステップを踏んで一歩、二歩後ろに下がると、ハルクを見据えたまま、拷問台の脇にある薬瓶を後ろ手で探る。何本かが手に触れた。
「このアマ、かかってこないんなら、こちらから……」
「シャーッ!」
鋭い奇声を発すると、アラミスは素早い動きで薬瓶の砲弾を放った。
「ちぇっ!」
ハルクが太い腕でそれを払いのけた瞬間、もう一本の薬瓶が顔面をとらえる。こちらはキャップを外したほうだ。
「ぎゃあ!」
薬瓶の中身を浴びた大男が、両目を押さえる。あれっ? 何の薬だったんだろう。確かめる暇もなかったけど、まあいいか。
アラミスは、体の前に構えていた腕で反動をつけ、高く跳んだ。
「アッチャギ!」
甲高い声とともに、豪快な前回し蹴りが相手の膝下を捉える。
「うっ、ううっ!」
思わず足を押さえ、苦悶の表情を浮かべるハルクに間髪を入れず、さっきより破壊力のある横回し蹴りが飛ぶ。