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レディー・マスケティアーズ
第11章 アトス&アラミス ――成城 木庭敦子の屋敷
          
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 あのハルクでもかなわない相手がいるのか。しかも、あんな華奢な女に苦もなくやられるとは……。
 木庭敦子は両手に火の点いた燭台をもち、自分に迫るもう一つの影に向かって振り回した。相手はひるむ様子もなく燭台を払いのけ、ヌンチャクを操るように、敦子の体のあちこちにディルトをお見舞いした。
「きゃあ! 痛い、痛いよ!」
 頭、首、胸、脇腹、みぞおち、膝、足首。アトスの攻撃はやまない。ソーセージのような肉塊と、獰猛な豹とでは、向き合う前から勝敗は明らかだった。
「おや、もう涙声かい? さっきのお返しがあるから、もうちょっと我慢してもらわないとね」
 アトスは容赦なく言った。
 敦子が羽織っていた紫色のガウンには、何頭ものドラゴンの刺繍があったが、その龍たちまでが「許してください」と半泣きになっているようだった。
 アトスは敦子のガウンを剥ぎ取り、ぶよぶよの裸体をベッドの上に放り投げた。かつらが脱げ落ち、白黒まだらの貧相な髪が現れた。
「助けて! お願い!」
「お黙り!」
 アトスが、敦子のたるんだ頬を打ち据える。
「やめて、やめて」
 ようやく手を止めると、アトスは敦子の太い首を掴み、ぐいと顔を近づけた。
「学ぶ機会があるのに、学ばない人間は敗者だ」
「えっ?」
 哲学者のように呟いたアラミスに、敦子が顔を上げる。
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