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レディー・マスケティアーズ
第5章 作戦開始 ――恵比寿 海綿清掃のフロア
「どうってことねえよ。ここが、あいつ名義のマンションとわかれば、隠しマイクとカメラを仕掛けるのは楽なもんだった。管理人はいたけど、『室内清掃にまいりました』でフリーパスさ。まっ、所長が前もって手配してくれたお陰だけど」
工藤は、唇の端を釣り上げるように、にやりとした。あまり歳は変わらないのに、坂上と違って針金のような細い体をしている。
「さすが潜入のプロね」
声をかけたのは、さっきポルトスと呼ばれた巨乳の女だ。褒められた工藤の目は、彼女の胸の谷間に釘付けになっている。
「いや、おれは忍び込んだだけで、カメラとマイクのセッティングは坂上ちゃんの仕事さ。いつものことだけどね」
名前を呼ばれた坂上は、静止したままのスクリーンからようやく目をそらし、照れくさそうに顔をみんなのほうに向けた。
「よし。これからのミッションを説明しよう。注目してくれ」
松永が坂上に合図すると、スクリーンには塚越涼子が映し出された。
先日、海綿清掃の事務所を訪れた老婦人だ。この前と服装が違うことからして、その一か月前、最初の依頼にここを訪れた時に違いない。
事務所の天井にセットされたカメラが、斜め上から塚越涼子の姿を捉えている。貧相な応接セットを挟んで、禿げ上がった頭が覗く。所長の松永の後姿だ。いつもと同じカーディガンを羽織っていることからもわかった。
「六月二十日の深夜、江東区住吉公園近くのマンション、パークサイド・パレスから、若い女性が一人転落死した。わたしの、いえ、元わたしの会社だったトーホー開発に入ったばかりの社員で、名前は桜井美里」
塚越涼子は、バッグから取り出した写真をテーブルに置いた。
工藤は、唇の端を釣り上げるように、にやりとした。あまり歳は変わらないのに、坂上と違って針金のような細い体をしている。
「さすが潜入のプロね」
声をかけたのは、さっきポルトスと呼ばれた巨乳の女だ。褒められた工藤の目は、彼女の胸の谷間に釘付けになっている。
「いや、おれは忍び込んだだけで、カメラとマイクのセッティングは坂上ちゃんの仕事さ。いつものことだけどね」
名前を呼ばれた坂上は、静止したままのスクリーンからようやく目をそらし、照れくさそうに顔をみんなのほうに向けた。
「よし。これからのミッションを説明しよう。注目してくれ」
松永が坂上に合図すると、スクリーンには塚越涼子が映し出された。
先日、海綿清掃の事務所を訪れた老婦人だ。この前と服装が違うことからして、その一か月前、最初の依頼にここを訪れた時に違いない。
事務所の天井にセットされたカメラが、斜め上から塚越涼子の姿を捉えている。貧相な応接セットを挟んで、禿げ上がった頭が覗く。所長の松永の後姿だ。いつもと同じカーディガンを羽織っていることからもわかった。
「六月二十日の深夜、江東区住吉公園近くのマンション、パークサイド・パレスから、若い女性が一人転落死した。わたしの、いえ、元わたしの会社だったトーホー開発に入ったばかりの社員で、名前は桜井美里」
塚越涼子は、バッグから取り出した写真をテーブルに置いた。