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レディー・マスケティアーズ
第5章 作戦開始 ――恵比寿 海綿清掃のフロア
「そのマンションは、トーホー開発が社員寮代わりに何部屋かを使っているもので、秋田から上京したばかりのその娘は、そこに住んで、そこから会社に通っていた。その娘の部屋は十階だったはず」
松永が相槌を打ち、「十階から転落したのでは即死だったでしょうね」と呟いた。
「ええ。でも、おかしなことが一杯あるのよ。警察の発表では、事故のあった六月二十日の夜、管理人に聞いても住人に聞いても、美里の姿もほかの人間の姿も見た者はいない。それに……」
「それに?」
「その日に限って、マンションの監視カメラが故障していて、出入りする人間を捉えられなかったというのよ」
「その日に限って故障ですか」
涼子は、ふうっと息を吐いた。
「証拠はないわ。だけど、その娘、桜井美里は四月に入社した折、特命企画部に配属されていた。会社の内情を知るわたしだから言えることだけど、そこの部長の田野倉祐作と主任の木庭浩一の日頃の行状からすれば、何があっても不思議はないわ」
松永が「ほおっ」と息を漏らす。
「田野倉や木庭は、会社に巣食うシロアリ。女と見るや食い物にするハイエナよ。あの娘が殺されたのか、自殺に追い込まれたのか、そんな証拠はどこにもないけれど、絶対に何かあるわ。自分の会社の恥をさらすようだけど、どうしても突き止めたいの」
「つまり、それを探れというのが、今回の依頼の趣旨ですね」
「探るだけじゃないわ。証拠をつかんで、あいつらを懲らしめてほしい。社会から抹殺し、二度とあの会社にいられないようにしてほしいの」
松永がカリカリと鉛筆を動かし、ノートに何やら書き込む音がした。
松永が相槌を打ち、「十階から転落したのでは即死だったでしょうね」と呟いた。
「ええ。でも、おかしなことが一杯あるのよ。警察の発表では、事故のあった六月二十日の夜、管理人に聞いても住人に聞いても、美里の姿もほかの人間の姿も見た者はいない。それに……」
「それに?」
「その日に限って、マンションの監視カメラが故障していて、出入りする人間を捉えられなかったというのよ」
「その日に限って故障ですか」
涼子は、ふうっと息を吐いた。
「証拠はないわ。だけど、その娘、桜井美里は四月に入社した折、特命企画部に配属されていた。会社の内情を知るわたしだから言えることだけど、そこの部長の田野倉祐作と主任の木庭浩一の日頃の行状からすれば、何があっても不思議はないわ」
松永が「ほおっ」と息を漏らす。
「田野倉や木庭は、会社に巣食うシロアリ。女と見るや食い物にするハイエナよ。あの娘が殺されたのか、自殺に追い込まれたのか、そんな証拠はどこにもないけれど、絶対に何かあるわ。自分の会社の恥をさらすようだけど、どうしても突き止めたいの」
「つまり、それを探れというのが、今回の依頼の趣旨ですね」
「探るだけじゃないわ。証拠をつかんで、あいつらを懲らしめてほしい。社会から抹殺し、二度とあの会社にいられないようにしてほしいの」
松永がカリカリと鉛筆を動かし、ノートに何やら書き込む音がした。