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レディー・マスケティアーズ
第5章 作戦開始 ――恵比寿 海綿清掃のフロア
「桜井美里は、ただの新入社員じゃないわ。わたしの親友のたった一人の孫娘だったの。あの子がトーホー開発に入るように世話を妬いたのもわたし。だから、わたしには責任がある。ことの真相を確かめ、親友の恨みを晴らす責任が」
 塚越涼子は、肩をわなわなと震わせた。
「それに、シロアリはもう一匹いる」
「もう一匹?」
「専務の木庭茂。浩一の叔父よ。社長の久保寺がおとなしいのをいいことに、会社の経理を一人で牛耳っている。これだけ業績が上がっているのに、収支報告はそれほどでもない。変なのよ。木庭だという証拠はないけれど、誰かが手を染めているとしたら、社内上層部の誰かだわ」
「手を染めるとは、つまり使い込みということですか」
 松永の問いに、老婦人は大きく頷いた。
「そちらの件を調べるのも今回の依頼に含まれると。そう理解してよろしいですな」
 松永の問いに、老婦人は大きく頷いた。
「あなたたち、裏の社会では『銃士隊』と呼ばれているそうね。こんなことがお願いできるのは、あなたたちしかいない。どうか年寄りの願いをかなえてくださいな」
 上気した塚越涼子が身を乗り出し、松永の両手を固く握ったところで画面が静止した。
「よし」という松永の合図で坂上がキーボードを叩くと、スクリーンが切り替わった。映し出されたのは、二か月前の新聞と複数の週刊誌の紙面だ。「美人独身女性、謎の転落死」という見出しも読み取れる。さらに、二か月前に江東区のマンションから転落死を遂げた桜井美里の写真が大写しになった。
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