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レディー・マスケティアーズ
第6章 ポルトス ――トーホー開発 特命企画部
*
わたしが夫と結婚したのは、二十四歳の時です。最初に就職した会社の先輩でした。
ええ。わたしにとって、夫は最初の男の人でした。夫のほかは、それまで誰も……。今思うと、わたし、本当に世間知らずのお馬鹿さんだったんです。
夫が会社からの独立を口にするようになったのは、結婚して五年経った頃でした。
当時、夫が勤めていたのは、学生を企業に紹介するインターンシップ仲介の会社だったんですが、自分の企画やアイデアをなかなか上司が認めてくれない。ならば起業して、自分の可能性を試してみたいと、しきりに言っていました。
結局、夫は自分の才能と運を信じて、新しい会社を立ち上げようと決心したんです。不安がなかったわけではありませんでしたが、わたしも夫に従おうと決めました。あの頃の昭人さん――夫です――は、それほど精気に満ちていましたから。
えっ? 夫の年齢ですか? わたしより五つ上です。一目ぼれしたのは、わたしのほうでした。
その頃のわたしたちは、二人ともが「タイタニック」の船上に立つ若い恋人たちの気分でした。何も怖いものはない。わたしたちのために世界は回っているって。
でも、起業の資金調達に奔走していた夫は頻繁に家を空けるようになり、長い時には二週間、三週間と帰らないこともありました。
ある日、一か月ぶりにうちに戻った夫は、すっかりやつれた様子で、でも、ほっとした顔でわたしに打ち明けました。
わたしが夫と結婚したのは、二十四歳の時です。最初に就職した会社の先輩でした。
ええ。わたしにとって、夫は最初の男の人でした。夫のほかは、それまで誰も……。今思うと、わたし、本当に世間知らずのお馬鹿さんだったんです。
夫が会社からの独立を口にするようになったのは、結婚して五年経った頃でした。
当時、夫が勤めていたのは、学生を企業に紹介するインターンシップ仲介の会社だったんですが、自分の企画やアイデアをなかなか上司が認めてくれない。ならば起業して、自分の可能性を試してみたいと、しきりに言っていました。
結局、夫は自分の才能と運を信じて、新しい会社を立ち上げようと決心したんです。不安がなかったわけではありませんでしたが、わたしも夫に従おうと決めました。あの頃の昭人さん――夫です――は、それほど精気に満ちていましたから。
えっ? 夫の年齢ですか? わたしより五つ上です。一目ぼれしたのは、わたしのほうでした。
その頃のわたしたちは、二人ともが「タイタニック」の船上に立つ若い恋人たちの気分でした。何も怖いものはない。わたしたちのために世界は回っているって。
でも、起業の資金調達に奔走していた夫は頻繁に家を空けるようになり、長い時には二週間、三週間と帰らないこともありました。
ある日、一か月ぶりにうちに戻った夫は、すっかりやつれた様子で、でも、ほっとした顔でわたしに打ち明けました。