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レディー・マスケティアーズ
第6章 ポルトス ――トーホー開発 特命企画部
「やっとのことで融資先が見つかったよ。僕の起業計画に心から賛同してくれたんだ」
わたしは、恐る恐る融資を頼んだお金の額を尋ねました。
「一億円だ。なあに、着実に事業を広げていけば、必ず返せる額さ」
 夫は弾んだ声で答えました。
 でも、わたしたちを待ち受けていたのは、バラ色の未来なんかじゃあありませんでした。ええ。その後の悲劇は沈没した「タイタニック」以上のものだったんです。
 会社を立ち上げた夫は、仕事が忙しいのか、前以上に家を空けるようになりました。わたしは、そんな夫の帰りをじっと待ち続けました。
 ある日、マンションのチャイムが鳴ったので、昭人さんが帰ったと思ってドアミラーを覗くと、立っていたのは眉を剃り落したスキンヘッドの男でした。
 マンションには、わたし一人しかいませんでした。突然のことだったし、何の要件かもわからないわたしは、言われるままにドアチェーンを外しました。
「あんたが、あの男の奥さんかい?」
 体が凍りつくような冷たい声でした。
 あわててドアを閉めようとしましたが、男が隙間に足を挟んでいるので、ピクリともしません。よく見ると、男は二人連れでした。
「知っているだろうが、旦那が残した一億の借金、支払いの期限が、もうとうに過ぎているんだよ」
 一人が言いました。
「震えるなよ、奥さん。何も今日、全額取り立てようと来たわけじゃねえ。できるわけないよな? 一億頭を揃えて返すなんてよ」
 もう一人の男が言いました。こちらはパンチパーマで、派手な柄の上着を着ていました。今日会社に来た「鬼塚金融」なのかって?
 いいえ。違います。「おたふくリース」という、何だか間の抜けた社名の人でした。だけど、おたふくとは程遠い恐ろしい男たちでした。
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