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レディー・マスケティアーズ
第6章 ポルトス ――トーホー開発 特命企画部
山岸沙也子が、涙に濡れた顔を上げた。
「鬼塚金融が来るようになった一週間前からは、都内のビジネスホテルを転々としています。だけど、いつまでこんなことを続けられるか……」
「ダメだ、ダメだ。そんなことをしても限界がある」
あたかもたった今思いついたように、田野倉は膝を叩いた。
「そうだ。それならいい場所がある。うちの会社が、社員寮代わりに数部屋を所有しているマンションがあるんだ。そこに身を隠したらどうだい。会社のほうは、しばらく休むことにして」
そう言うと、田野倉はゴクリと唾を飲み込んだ。いよいよだ。いよいよこの女をおれたちのクモの巣にご招待できる。
「でも、わたしなんかのために……」
「何を言うんだい。わたしたちは同じ会社にいるんだよ。言ってみれば、家族のようなものじゃないか」
上ずった声で言うと、田野倉は内線電話に手を伸ばし、「タクシーを会社の裏口に着けるように」と誰かに命じた。
「さあ。今いるビジネスホテルから荷物を運び出して、そのマンションに向かおう。心配だから、わたしも同行するよ。江東区の住吉公園近くにあるパークサイド・パレスというマンションだ」
田野倉祐作が、にんまりと笑った。
「鬼塚金融が来るようになった一週間前からは、都内のビジネスホテルを転々としています。だけど、いつまでこんなことを続けられるか……」
「ダメだ、ダメだ。そんなことをしても限界がある」
あたかもたった今思いついたように、田野倉は膝を叩いた。
「そうだ。それならいい場所がある。うちの会社が、社員寮代わりに数部屋を所有しているマンションがあるんだ。そこに身を隠したらどうだい。会社のほうは、しばらく休むことにして」
そう言うと、田野倉はゴクリと唾を飲み込んだ。いよいよだ。いよいよこの女をおれたちのクモの巣にご招待できる。
「でも、わたしなんかのために……」
「何を言うんだい。わたしたちは同じ会社にいるんだよ。言ってみれば、家族のようなものじゃないか」
上ずった声で言うと、田野倉は内線電話に手を伸ばし、「タクシーを会社の裏口に着けるように」と誰かに命じた。
「さあ。今いるビジネスホテルから荷物を運び出して、そのマンションに向かおう。心配だから、わたしも同行するよ。江東区の住吉公園近くにあるパークサイド・パレスというマンションだ」
田野倉祐作が、にんまりと笑った。