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レディー・マスケティアーズ
第7章 アラミス ――カフェ・アレクサンドル
「それで、おまえ。おれが言ったとおり、今はおとなしくしているんだろうな」
「当たり前さ。ちゃんと叔父貴の言いつけは守っているよ。滝にこそ打たれちゃいないが、その辺の生臭坊主より、よっぽど真面目な暮らしぶりだ」
茂に「おまえ」と呼び捨てにされた木庭浩一は、ぷっと頬を膨らませた。
「嘘をつけ! 田野倉から知らせがあったぞ。どこかで拾った若い女を三軒茶屋のマンションに連れ込んで、好き放題やっているそうじゃないか。六月にマンションから飛び降りた桜井美里という女の事件は、まだ片が付いたわけじゃないんだぞ!」
若い女?
ああ、三好綾香のことか。あれは、こっちが引っ掛けたんじゃない。向こうから尻尾を振ってついて来ただけの女だ。名器のうえに、あれほどの好きものとは思わなかったが……。
それにしても田野倉のやつ。叔父貴に、そんなことまでタレこみやがって。部長の椅子につけたのも、おれが叔父貴に散々売り込んでやったからじゃないか。
確かに田野倉には、桜井美里の件で借りがある。
しかし、他人事とは言わせねえぞ。あの女を盗み食いしていたことを、おれが知らないとでも思っているのか。それなのに、この時とばかりに叔父貴に尻尾を振りやがって……。
「おい、聞いているのか! おれのところには、今でも、あの事件のことで警察が事情を聞きに来ているんだからな」
ちょうど背の高いバーテンダーが、二人のテーブルにロックグラスを並べようとしているところで、茂の口から出た「警察」という言葉に、バーテンダーの肩がぴくっと動いた。
「当たり前さ。ちゃんと叔父貴の言いつけは守っているよ。滝にこそ打たれちゃいないが、その辺の生臭坊主より、よっぽど真面目な暮らしぶりだ」
茂に「おまえ」と呼び捨てにされた木庭浩一は、ぷっと頬を膨らませた。
「嘘をつけ! 田野倉から知らせがあったぞ。どこかで拾った若い女を三軒茶屋のマンションに連れ込んで、好き放題やっているそうじゃないか。六月にマンションから飛び降りた桜井美里という女の事件は、まだ片が付いたわけじゃないんだぞ!」
若い女?
ああ、三好綾香のことか。あれは、こっちが引っ掛けたんじゃない。向こうから尻尾を振ってついて来ただけの女だ。名器のうえに、あれほどの好きものとは思わなかったが……。
それにしても田野倉のやつ。叔父貴に、そんなことまでタレこみやがって。部長の椅子につけたのも、おれが叔父貴に散々売り込んでやったからじゃないか。
確かに田野倉には、桜井美里の件で借りがある。
しかし、他人事とは言わせねえぞ。あの女を盗み食いしていたことを、おれが知らないとでも思っているのか。それなのに、この時とばかりに叔父貴に尻尾を振りやがって……。
「おい、聞いているのか! おれのところには、今でも、あの事件のことで警察が事情を聞きに来ているんだからな」
ちょうど背の高いバーテンダーが、二人のテーブルにロックグラスを並べようとしているところで、茂の口から出た「警察」という言葉に、バーテンダーの肩がぴくっと動いた。