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レディー・マスケティアーズ
第9章 アラミス ――三軒茶屋 木庭浩一のマンション
(あっ、いや、いや。)
 女の肩が、がくがくと震えた。ざまあ見ろ。浩一は無言のまま、おのれの剛刀で女をずぶりと貫いた。
(ああっ、やめて!)
 折れそうな細い体を前に、浩一は肉棒を送り出す速度を変える。ゆっくり引いて一気に突く。ゆっくり引いて一気に突く。ゆっくり引いて一気に……。
 浩一は、じらすように抽送を繰り返した。
(うっ、うっ、うっ。い、いやあ。)
 女の端正な顔が歓喜に歪むのを目の当たりにすると、嘘なく感じているのがわかった。声もだんだんに大きくなってきた。女の体は正直なものだ。
 どうやら正気に戻りつつあるようだ。隣の茂に目くばせすると、相手も大きく頷いた。次の仕事にかかる頃合いのようだ。
 菜緒美は、朦朧とした頭のまま、何とか薄目を開けた。
 口の中はからからに渇いている。両腕と両足は奇妙な機械に縛り付けられていて、自由にならない。
 太腿の辺りが妙にきりきりする。前を見ると、男が笑いながらわたしを犯していた。
(誰? あなた、いったい誰なの?) 
 黙々と怒張を抜き差しする男を問い詰めようとしても、声にならない。
 何の快感もないのに、わたしの肉襞からは、どろどろと汁が垂れている。自分の思いとは、まるで無関係に……。
「おい、女! おまえは誰だ?」
 いきなり誰かの拳が飛んできた。頬に鋭い痛みが走る。
 おまえは誰だって? 
この男も、わたしと同じことを知りたがっているの? わたしは、わたしは……。
そうだ。思い出した。
「わ……た……し……」
「何だと? はっきり言え!」
 また拳が頬を打った。
「わたしは……アラミス……」
 消え入るような声で言った。
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