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きっかけは?
第2章 年下の男の子🎵
ピローン……
【麻里絵、今日残業?
残業じゃなかったら『一二三(ひふみ)』行かない?】
一二三とは大将と女将さんの赤提灯の店。
しばらく行ってなかったし残業もないので駅で待ち合わせることにした。
「そう言えば、お店の名前の由来とかってあるんですか?」
しばらくはヒサオとの間で、『赤提灯の店』とか、『大将の店』と呼んでいたけれど、前回、一二三という看板をみた。
「店は親父の代からやってたんだけどさ。
その時は『一丁(いっちょう)』だったんだ。」
「そうそうこの人がまだ修行中から、私は手伝いに入っていたのよ。」
「代替わりする時に、好きな名前にしろって一二三に変えたんだ。」
「さあ、麻里絵ちゃん。何で一二三か当ててみて。当てたら飲み物1杯サービスよ。」
いつものごとく、ヒサオ好みセレクトのコース料理をいただきながら考える。
「今日のおすすめは生ガキだけど、麻里絵ちゃん食べられるかい?」
「はい、大好物です。
ヒサオはお店の名前の由来知ってるの?」
「ああ、読み方わからなくて聞いたときに合わせて教えてもらったから。」
「ん~、一歩二歩三歩みたいな、一歩一歩積み重ねていくとかですか?」
「へい生ガキ一丁~。」
「うわぁ、美味しそう。」
「“そう“じゃなくて旨いから。」
プリプリな牡蛎が沢山お皿に乗っていた。
「さぁさぁ、食べながら当ててみて。ねぇ、ひぃ君。」
「気持ち悪いな、ばばぁ。」
「あら、ここは『みっちゃん』って返すところじゃない。」
「ばばぁ、それ、ヒントのつもりか?」
「うふふ、さてどうかしら?」
ヒント、ヒント?
「ひぃ君とみっちゃん?“ふ“がわからない。ん~。
気になって味わえない。もう降参。」
「麻里絵、諦めるの早すぎ。」
ヒサオが笑いながらジョッキを空けていく。
その大きな手と口を見ていても答えは出ないのだけど、ヒサオの男らしさを見惚けていた。
「あらあら、もう全然考える気ないわね。」
「す、すみません。もう正規の料金で生レモンサワーお願いします。」
「はい、レモンサワー一丁。」
「ひぃ君の名前が一成(ひとなり)、私が三津枝(みつえ)、二人で店を頑張ろうって一二三なのよ。」
「あ~。あともう少しだったのにな。」